京都市の観光力が年々アップしている。同市がまとめた「平成28年 京都観光総合調査」によると、2016年1月から12月までの1年間に京都市を訪れた観光客数は5522万人で、3年連続で5500万人超となった。宿泊客数は1415万人で過去最高、外国人宿泊数も318万人と過去最高を記録した(いずれも無認可民泊施設での宿泊客数は含まない)。修学旅行生数(宿泊)も110.5万人と、全国の修学旅行生が減少するなかで前年を上回った。
量の増加は質の向上に結びついた。大幅に伸びたのは観光消費額で前年比11.9%増の1兆862億円で、2020年の目標(観光消費額1兆円)を4年前倒しで達成した。京都観光への満足度も高い。「大変満足~やや満足」は日本人観光客の89%、外国人観光客の96.9%に達した。また、外国人の来訪動機のうち「伝統文化鑑賞」が53.4%と前年から7ポイント以上アップし、それに対する感動度も59.4%から80.8%へと高まった。
こうした調査結果を受け、同市は「質の向上の取り組みが実を結び、特に『消費』・『宿泊』・『歴史・伝統文化』が成長」と分析している。とどまるところを知らない「京都人気」を数字が裏付けている。
押し寄せる観光客で不満やトラブルも続出
とはいえ、観光客の増加は必ずしもメリットだけではない。京都観光の足はバスがメインだが、7月下旬、地元の京都新聞にこんな記事が掲載された。
「キャリーバッグに路線バス困惑」
「観光客持ち込み混雑」
観光客がバスの車内に持ち込む大型のキャリーバッグが通路をふさぐため、混雑度が増すうえ、乗降に時間がかかるためダイヤの乱れも生じているというのだ。市交通局は京都駅でキャリーバッグを持ってバスに乗ろうとしている客に声をかけ、ロッカーなどの利用を働き掛けているが、持ち込み客があとを絶たないという。
市バスの混雑は乗客数の増加でもうかがえる。16年度の1日平均乗客数は36万3000人(地下鉄は37万9000人)で前年度よりも1万人増加している(地下鉄は7000人増)。京都では市バスと京都バスの均一運賃区間(230円)で乗り放題となる一日乗車券カードが発売されている。2000年度に100万枚だった発売枚数が15年度は614万枚と6倍以上に増えている。一方、市バス・地下鉄と京都バスが使える京都観光一日乗車券の発売枚数は横ばい。増え続ける観光客の移動の主役はバスなのだ。
市交通局は地理に不案内な観光客がバス前方に固まりがちで降車時に時間がかかることから、「後乗り前降り」の乗降方式を「前乗り後降り」にする実験を予定するなど、対策に取り組んでいる。
混雑は市バスだけではない。市内の有名スポットに観光客が集中してしまい歩くこともままならないような状況になっている。急増中の外国人観光客は半数超が清水寺や金閣寺を訪れている。両地区は日本人観光客、修学旅行生も多い。地元のタクシードライバーは、こう嘆く。
「清水寺から産寧坂(三年坂)、高台寺、八坂神社へと続く東山エリアはいつ行っても観光客でいっぱいです。着物姿の女性は大半がレンタル着物の外国人さん。風情がなくなりました」
前掲の「京都観光総合調査」では公共交通機関に対する残念度は日本人で12.3%、外国人で9.5%に。観光地の混雑の残念度は日本人15%、外国人5.9%となっている。