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京都、観光客増え過ぎで「街並み一変&良さ消失」の危機…交通混乱やトラブル多発も

文=山田稔/ジャーナリスト
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京都、観光客増え過ぎで「街並み一変&良さ消失」の危機…交通混乱やトラブル多発もの画像3観光客でにぎわう東山エリア

違法民泊施設も横行、300件を営業中止に

 各地で問題になっている違法民泊施設は、京都でも例外ではない。同市は違法な民泊施設を許さないという姿勢で取り組みを強化している。16年度は「民泊通報・相談窓口」や関係機関への通報が1901件あり、2143回の現地調査を実施した(調査指導対象施設数は1159)。このうち営業者を特定し、営業中止の指導を行った施設数が300に上った。一方で505件については営業者が特定できず指導も行えずにいる。

「京都観光総合調査」では無許可民泊施設の宿泊者数を年間110万人と推計。これは修学旅行生数と同じレベルである。こうした違法民泊施設をめぐっては、京都だけの話ではないが、騒音やセキュリティ、ごみ、異臭などで近隣住民らとのトラブルが相次いでいる。

 住所表示があいまいなうえ看板のない施設も多いため、タクシー運転手は目的地を探すのに一苦労。市内の個人タクシー運転手でつくる組合の代表らが市役所を訪れ、「屋外に標識や市で統一したマークの表示の義務付け」などの対策の実施を市に要望する事態となっている。

 観光消費額1兆円の目標を4年前倒しで達成したのは朗報だが、その一方で「増え続ける観光客」によってもたらされた課題が山積しているのも事実だ。京都市は一連の課題に対して、さまざまな対策を講じてはいる。

 しかし、政府が20年に訪日外国人4000万人の目標を掲げているだけに、京都を訪れる観光客が、この先大幅に増える可能性は高い。ちなみに京都観光総合調査では、16年に訪日外国人の27.5%が京都府を訪問している。

 交通機関や人気スポットの混雑緩和、違法民泊施設の解消といった課題が解決されないまま、外国人客がさらに増え続けるようなことになれば、観光客の不満だけでなく、地元住民とのあつれきが高まりかねない。

 そこで懸念されるのが、年間3200万人の観光客が訪れる欧州3番目の観光都市・バルセロナの二の舞になることだ。バルセロナの人口は160万人。京都市は147万人である。

 バルセロナでは1992年の五輪以降、観光化が急速に進み、古くからの街並みが一変してしまった。無認可の宿泊施設が急増し、観光客と住民のトラブルが続出する事態に直面した。

 6月に就任したばかりの新しい市長は対策に苦慮。観光客向け宿泊施設の営業免許の発行を1年間停止するという措置を講じた。これに対して、投資家らの間から強い不満の声が上がっていると伝えられている。

 京都市は18年度から宿泊税を導入するため、9月市議会に条例案を提出するという。税収を観光振興や混雑緩和に充てるというものだ。これはこれでひとつの対策だろうが、ハードとソフト両面でのもっと抜本的な対策が必要だろう。

 観光産業の振興と混雑緩和、地元住民の生活環境維持。バルセロナが抱える課題は決して他人事ではない。
(文=山田稔/ジャーナリスト)

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