ポケモンGO、30代男性から圧倒的支持…リリースから1年たっても利用者150%増
スマートフォン(スマホ)にダウンロードされたアプリが、実際にどのような性年代にどのくらい使われているのか。本連載前回記事では、「アプリの視聴率」を調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーの事業戦略室室長の岡田雄伸氏に、若年層に人気の漫画アプリの取り組みなどについて聞いた。
後編となる今回は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の趨勢やリリースから1年が過ぎた「ポケモンGO」の今について、引き続き岡田氏の話をお伝えする。
ツイッターの起動回数は平均1日11回以上?
――今回は、アプリの起動回数についてうかがえればと思います。起動回数が多くなりがちなアプリにツイッターやフェイスブックなどのSNSがあります。
私は2014年にネット依存に関する書籍『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』(CCCメディアハウス)を出版しましたが、同書で引用した『インターネット白書2012』(インターネットメディア総合研究所)のデータによると、1日に5回以上ツイッターで投稿する人は12.9%、フェイスブックでは2.1%でした。今はどうなのでしょうか。
岡田雄伸氏(以下、岡田) 「App Ape」のモニターのユーザーのSNSの「起動回数」を平均してみました。こちらは「起動」なので、『インターネット白書2012』の「投稿する回数」とイコールではありません。
画面に表示されたら1起動とみなし、ツイッター利用→LINE利用(ツイッターはバックグラウンド)→ツイッター再利用の場合、ツイッターが2回、LINEが1回となります。
上記の指標で算出した場合、ツイッターが11回、フェイスブックは5.2回、そしてインスタグラムが6.9回となります。
――ツイッターが群を抜いていますね。会社員の場合は、仕事中も何かしらのタイミングで起動しないと1日11回を達成するのは難しそうです。
岡田 なお、この数値はそれぞれのSNSをダウンロードしているユーザーの利用動向を平均した数値になるため、「SNSアプリをダウンロードしたけれど、まったく使っていない」という人も含まれています。よって、使っている人はもっと頻繁に起動しているはずです。
――使っている人は11回ではきかないとなると、かなりあわただしいですね。ほかのSNSに比べて、ツイッターの起動回数が多い理由はなんでしょうか。
岡田 まず、前提として「App Ape」はモニターのスマホアプリの利用動向を見るサービスなので、そのためツイッターが多くなったということがあるでしょう。フェイスブックはパソコンで見るユーザーも多いので、情報をパソコンで消費しているユーザーも多いことが想定されます。
――フェイスブックはユーザーの年齢層もほかの2つに比べて高いので、スマホネイティブ世代ではないですし、「パソコンのほうが楽」という人は多いでしょうね。
岡田 また、それぞれのSNSの特徴や価値観もあるでしょう。フェイスブックは投稿一つひとつの内容を重視する傾向がありますし、インスタグラムは画像が「インスタ映えするか」という特有の価値観が重視されます。フェイスブックやインスタグラムは「情報が多いほどいい」という「量」の文化ではないですよね。
一方で、ツイッターは「量」重視の価値観です。ほかの2つのSNSに比べて「つらい」「しんどい」といった愚痴が圧倒的に多いですし、「これウケる!」といったネタを投下するだけの投稿も多いです。
また、ツイッターは「誰かに伝えたい」という意図ではなく、メモやブックマークなど自分用の備忘録としてつぶやくという使い方をする人も多いですよね。
――確かに、フェイスブックでブックマーク代わりにリンクだけを投稿すると、なんだか不愛想に見えますね。年代の話がありましたが、ツイッターの利用世代はどうなっているでしょうか。
岡田 「App Ape」において、ツイッターの7月のMAU(マンスリーアクティブユーザー/月に1回でもアプリを起動したユーザーの数)を世代別に見たグラフは、こちらの通りです。パーセンテージは公表できないのですが、グラフの棒の長さで見ていただければと思います。
――10代を除けば、きれいなピラミッド型になっていますね。ツイッターは10代の利用者は少ないのですね。確かに、私は中学生向けにネット利用の講演をすることがあるのですが、そのときに利用しているSNSを聞いてみると、LINEがダントツでツイッターはごくわずかです。これが、はたして「ツイッター人気の陰り」なのか、それとも「中学生なので学校内の仲間とつながれれば十分で、大学生くらいになったらより広い範囲でつながれるツイッターを使い出すのか」は、興味深いですね。
夏休み効果で利用者150%増の「ポケモンGO」
――貴社には約1年前からお話をうかがっていますが、初回で四半期を象徴するアプリとして挙げていただいた「ポケモンGO」は、リリースから1年たった今、いかがでしょうか。
岡田 2017年の8月に横浜のみなとみらいで「Pokemon GO PARK」というイベントが行われました。それまではヨーロッパに行かないと入手できなかったレアなポケモンを期間限定で入手できるようになったのです。このイベント期間中は、前月と比較して1日に起動したユーザーの数は150%も伸びました。
――ヨーロッパに行くよりは楽でしょうが、それでも地方からは遠い場所にも多くの人が来たのですね。
岡田 イベント期間中は「Pokemon GO PARK」に行かなくても、各所でほかのレアポケモンが出るようになっていましたし、何より夏休みはポケモンの映画も公開される時期です。そのため、「みなとみらいのイベントだけで跳ねた」というわけではないと思いますが、イベントが果たした役割はとても大きかったと思います。「特定の場所に行かなくてはいけない」イベントでこれだけ成果が出たというのは、とても参考になりましたね。
――「ポケモンGO」の利用者の性年代は、いかがでしょうか?
岡田 「App Ape」のグラフは、こちらの図になります。一番多い30代男性は、まさに「初代ポケモン世代」ですね。
――利用者数が20代>30代>40代ときれいなピラミッド型になっていたツイッターと比べて、「ポケモンGO」は30代男性が一番多いながらも、ほかの世代も一定数利用していることがわかります。ただ、ツイッターもそうでしたが、10代の利用は少ないのですね。10代では「親が使わせていない」という可能性もありそうですが。
「フェイスブックは中高年向き」のワケ
一世を風靡したサービスやコンテンツは、ターゲットよりも下の世代には敬遠されてしまうという事情があるのかもしれない。「フェイスブックは中高年向き」といわれるのも、「ポケモンGO」ユーザーに30代男性が一番多いのも、「2ちゃんねらーに孫ができた」というエピソードも、当初のターゲットだった人たちが年を取っても利用し続けているのだろう。
前編で新興の漫画アプリの10代人気について触れたが、これらは10代に人気のコンテンツをそろえたということはもちろんだが、新しいサービスゆえに10代が「自分たち向けのサービスだ」と思えたという側面も考えられる。
人気のサービスやコンテンツに「楽しそうだから、私たちも入れてください」と下の世代が続かない。それは、古参ぶりたい人が古参ぶれないという点では痛快だが、長くそこにあり続けたことが「ブランド」にならないどころか、むしろ下の世代にネガティブな要素としてとらえられて、また新しいサービスやコンテンツが生まれ続ける。そう思うと、その変化の目まぐるしさに怖さも感じる。
(文・構成=石徹白未亜/ライター)
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!