「出生率全国2位」「百貨店・スーパー数全国1位」が示す、暮らしやすさ
滋賀県のイメージといえば、日本一の湖・琵琶湖だろう。そのほかに思い浮かぶのは、近江商人、近江牛、彦根城、安土城、比叡山延暦寺といったところか。
「ここ滋賀」の総合案内にあるパンフレットの中で興味深かったのが、「滋賀らしい 仕事×暮らし 読本」という冊子だ。滋賀大学の学生が県内の中小企業を取材して編集したもので、数十社の企業紹介とともに、そこで働く若手・中堅社員の日常生活、仕事への思いなどをコンパクトにまとめてあり、地場企業や従業員の実態の一端がうかがえる。
冊子の冒頭に「滋賀ではじめるワーク・ライフ・バランス」というコーナーがあり、働きやすさランキング、暮らしやすさランキングとして8つの指標が紹介されている。
(1)製造品の出荷額…全国1位
(2)製造業1事業所当たり付加価値額 8億2148万円…全国2位
(3)従業員1人当たり現金給与総額 495万円…全国3位
(4)男性の有業率 71%…全国3位
(5)5年間の一戸建て住宅の増加率 9.9%…全国1位
(6)出生率 人口1000人に対して9.1人…全国2位
(7)百貨店、総合スーパー数は人口10万人当たり2.33店…全国1位
(8)自然公園の面積が県土総面積に占める割合 37.3%…全国1位
仕事を取り巻く環境、暮らしを取り巻く環境ともに高い水準だ。琵琶湖に代表される自然豊かな土地で、名古屋や京都、大阪へのアクセスもいい。
出生率の数値は2015年のものだが、沖縄県に次ぐ高さである。この年、出生数が死者数を上回ったのは沖縄、愛知、東京と滋賀だけだった。滋賀は子どもを産み、育てる環境に恵まれているということなのだろう。県民の平均年齢は44.5歳で全国3位の“若さ”だ。
このほか、国指定の重要文化財(国宝含む)の指定件数は819件で全国4位。そのうち国宝の指定件数は55件で全国5位と、歴史・文化が息づいていることがわかる。
近年は外国人観光客も急増中
水の国・滋賀の魅力に遅まきながら気が付いたからだろうか。国内外からの観光客数がこの数年、急増している。15年の滋賀県の観光入り込み客数は延べ4794万人。前年比3.5%増で過去最高となった。宿泊客数は382万8800人で15%増。すごいのは外国人観光客数で、延べ47万5778人と前年比68%増だ。宿泊客数は36万1652人で99.8%増と、ほぼ2倍に増えたことになる。いずれも過去最高である。
外国人宿泊客36万人というのは、日帰り観光客(11万4126人)の3倍以上。京都や大阪での宿泊をあきらめて滋賀に宿泊先を求めるケースがあるだけでなく、ソーシャルネットワーキング(SNS)上の情報で滋賀の魅力を知り、腰を据えて観光する客が増えてきているという側面もある。
しかし、全国的に見れば外国人観光客数、宿泊者数は中位。京都の10分の1程度でしかない。逆にいえば、今後の情報発信や魅力的なツアー、滞在プランを用意すれば、まだまだ伸びしろがあるということだ。
高島屋(創業者の義父が近江国高島郡出身)、西川産業(創業者は近江国蒲生郡出身)など、近江商人とゆかりが深い企業が残る日本橋に、滋賀県はアンテナショップをオープンした。「ここ滋賀」が、そうした滋賀県の魅力と実力をどう情報発信していくのか。挑戦は始まったばかりだ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)