新生エアアジア・ジャパンが10月29日に開業した。名古屋(中部国際空港)=札幌(新千歳空港)間を1日2往復する。これにより、閉塞した日本の国内線航空市場の活性化が始まるかもしれない。主要2社が高運賃を維持する寡占市場に、世界でも有数の独立系低コスト航空会社が参入してくるのである。
エアアジアグループはマレーシアを本拠地とするアジア第1のLCC(格安航空会社)グループである。記憶に新しいが、エアアジアグループは2011年に全日本空輸(ANA)と共に日本におけるLCCの先駆けとなったエアアジア・ジャパンを設立し、12年8月に成田=福岡線をはじめとする国内線で営業を開始した。しかし、13年に開業1年足らずで全日空との提携を解消したことにより、一旦はエアアジアの名前が日本の国内線から消えた。
エアアジアグループのトニー・フェルナンデスCEOはその後、ただちに日本への再進出を表明し、航空法で求められる国内線経営に必要な3分の2を担う日本人資本を楽天その他の投資家に仰ぎ、新生エアアジア・ジャパンを設立した。路線開設の準備は困難を極めたようで、4年の歳月を費やし、ようやく開業に漕ぎ着けた。
ANAとJALの経営にも影響
同社のホームページを見ると、今回の開業にあたり名古屋=札幌間の運賃で片道5円という破格の航空券を提供したが、これは開業のキャンペーン特価である。オールインフェアと称する空港使用料なども含めた包括的な運賃として、普段は片道4,500円から5,400円、限定的に設けられたピーク日で最大2万円程度の運賃が設定されるようである。
12月初旬では、名古屋=札幌路線では各社の合計で1日17便のフライトがある。エアアジアの2往復のほかに、それぞれ、ANAが6往復、日本航空(JAL)が5往復、スカイマークが2往復、ジェットスター・ジャパンが2往復を運航する。平日の航空運賃(片道)で比較すると、エアアジアの4,500円に対してJALは普通運賃を4万3,210円として、エアアジア便の近傍の運航時間帯の便に、特別割引運賃として1万3,610円を設定。ANAもJALと同様に普通運賃4万3,210円に対して特割1万3,610円を設定、スカイマークは普通運賃2万2,210円に対して「いま得」8,310~9,910円を設定。
さらに唯一のLCCとしての競争相手であるジェットスター・ジャパンは4,680円を設定し、各社ともにエアアジア開業を意識した運賃を設定している。ただし、結果を見ると、同水準の運賃を設定しているのはジェットスターのみである。