日経平均株価が25年ぶりに高値を続ける株式市場で、荒稼ぎする“事件師”たちの動きが白日の下にさらされた。
東証マザーズ上場のインターネット通信販売会社、ストリームの株価を不正に吊り上げたとして、警視庁捜査2課と組織犯罪対策部は10月13日から18日にかけて、仕手筋など6人を逮捕した。
金融商品取引法違反(相場操縦)容疑で逮捕したのは高橋利典、笹尾明孝、本多俊郎、松浦正親、佐戸康高、四方啓二の6容疑者。ストリームの元社長で中国籍の劉海涛(リュウ・カイトウ)についても同容疑で逮捕状を取って行方を追っている。同容疑者は海外に逃亡しているとの情報もある。
警視庁捜査2課と証券取引等監視委員会による家宅捜索が行われたのは昨年10月のこと。同年暮れに、事件のカギを握る金融ブローカーが病死し、立件が危ぶまれていたが、1年後に大詰めを迎えた。
ストリームの株価は、2014年2月上旬には80円前後で推移していたが、同月下旬には110円台まで上昇。さらに同年9月下旬にかけて530円前後まで急騰した。実に6.6倍だ。その後、急落し、怪しい値動きぶりが際立った。
6名の逮捕容疑は、14年2月中旬に、共謀して直近の株価を上回る価格で連続して注文を出し、株価が上昇しているように見せかける「買い上がり」や、同一人物が「売り」と「買い」注文を繰り返し、活発に取引が行われているように装う「仮装売買」の手口で、ストリームの株価を不正に吊り上げた疑いが持たれている。
数々の仕手戦に登場する金融ブローカー(昨年末に死亡)が株価操縦の仕掛け人とされる。松浦・佐戸・四方の3容疑者は、ストリーム株を担保として金融グループに仕手資金を貸し付けた。金融ブローカーグループの仕手筋である高橋・笹尾・本多の3容疑者が、実際の売買を担当していたとみられている。
この事件が注目されたのは、単純な株価操縦事件とは異なり、有象無象の魑魅魍魎がうごめく“アングラ”世界の闇を垣間見せたからだ。
昨年10月、警視庁がストリーム本社の家宅捜索を行ったとき、「港区にある会社役員の男性の事務所など関係先を家宅捜索」と報じられた。新聞報道などにあった港区の事務所とは、松浦大助氏のグループの本拠地だ。松浦大助氏は“フィクサー”の異名をとる朝堂院大覚氏(本名・松浦良右)の子息。松浦・佐戸・四方3容疑者は松浦大助氏に連なるグループとみられている。
松浦容疑者は、松浦大助氏と姓は同じだが親族ではない。大分県でタクシー会社を経営していたことがある。山一證券出身の佐戸容疑者は和牛預託商法で一般投資家から巨額の出資金を集め2011年に破綻した安愚楽牧場の常務執行役員を務めていた。四方容疑者はフィクサー見習いとして朝堂院大覚氏が主宰する政治団体「法曹政治連盟」で修業した。
松浦大助氏のグループは東京・六本木のクラブ、倒産した安愚楽牧場から引き継いだホテルの飲食部門、豊富な資金を持つ金融部門など手広く事業を営んでいる。