ストリームの創業者も株価操縦事件に関与か
劉容疑者は、日本で成功した在日華僑起業家のひとりといわれた。中国安徽省出身で、日本に留学し、1995年に東京商船大学(現東京海洋大学)流通情報工学部を卒業。亜土電子工業の勤務を経て99年にストリームを設立し、社長に就いた。亜土電子工業から香港を中心とした中国向けのパソコンの輸出業務を引き継いでストリームを立ち上げた。31歳の時だった。
インターネットの黎明期だったため、パソコン通信販売事業を始めた。2005年にベスト電器と業務・資本提携し、パソコンの仕入れルートを確保。07年に東証マザーズに上場を果たした。劉容疑者が発行済み株式の22.07%を保有する筆頭株主で、ベスト電器は19.84%を持つ第2位株主である(17年7月末現在)。
ストリームは「ECカレント」のサイト名でパソコンや家電の低価格販売を行っているが、苦戦が続き、オンラインゲームや化粧品・健康食品の販売など多角化を図った。
ストリームは18年1月期の業績予想を大幅に下方修正した。売上高は5%減の208億円。7%増を見込んでいた従来予想から28億円下方修正した。純利益の従来予想は、その前の期の2.4倍の2億円から46%増の1.2億円に減額した。
通常の株価操縦事件では、ターゲットにされた企業の経営者は「会社を食い物にされた」と悔しがるものだが、ストリーム事件は事情を異にする。経営者が株価操作にかかわれば、インサイダー取引になる。
劉容疑者には、同じ金融商品取引法違反容疑で逮捕状が出た。だが、捜査の手が迫っていた今年4月27日、社長を辞任し会長に退き、さらに次々と逮捕者が出た10月12日に会長も辞任した。
劉容疑者はストリーム株を担保にして、松浦大助氏のグループから借金があり、借金を返済するために株価操縦を仕組んだという見方がある。相場操縦で得た資金の一部がアングラ世界に流れた可能性も指摘されている。魑魅魍魎が暗躍する事件の全体像が解明されることはあるのだろうか。
ストリームの株価を吊り上げるために不正な売買を繰り返したとして男8人が送検された事件で東京地検特捜部は、11月21日に高橋被告と笹尾被告を起訴したのに続き、27日には佐戸被告を起訴した。残り5人は不起訴処分とした。不起訴にした理由は明らかにしていない。
(文=編集部)