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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

Nintendo Switch、大ヒット生んだ「超・普通のマーケティング戦略」

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季
Nintendo Switch、大ヒット生んだ「超・普通のマーケティング戦略」の画像1任天堂 HP」より

 発売から9カ月が経過した家庭用ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」(任天堂)が好調を維持している。売上台数は11月までで240万台以上(国内販売数、以下同)となっており、任天堂は通期のハード販売計画を1000万台から1400万台、ソフト販売計画も3500万本から5000万本に上方修正した。

 最近ではスマホゲームがゲーム業界の主流となっているが、そのなかでSwitchがこれだけのヒットを記録できたのはなぜなのか。立教大学経営学部教授でマーケティングを教える有馬賢治氏は、Switchのヒットについて「オーソドックスなマーケティングの成功例」と話す。

効果的なマーケティング・ミックスが勝因

「マーケティングには4P(Product:製品、Price:価格、Place:流通、Promotion:広告)という言葉があり、それぞれのPの長所をうまく組み合わせると効果的な販売活動が行えると考えられています。これをマーケティング用語で『マーケティング・ミックス』と呼ぶのですが、Switchはこのマーケティング・ミックスが見事です」(有馬氏)

 マーケティング・ミックスについては、同氏のもう一つの連載記事『コンビニのおでんとビール、なぜ少しずつ陳列変更?コカ・コーラとエルメスは真逆戦略?』で解説した。“モノを売る基本”ともいえるこの概念を、Switchはうまく実現しているという。

「競合と比較して高価ではなく買いやすい価格設定(Price)、在庫が増えて割引されることのないよう一定の品薄状態を続けて定価販売で流通させる出荷台数の管理(Place)、SNSや『ゲーム実況』と呼ばれる動画配信にしっかりと対応する現代的な広告手法(Promotion)など、これらをうまく組み合わさることでSwitchの商品価値を落とすことなく、発売以来順調な販売推移を保っていると分析できます」(同)

スイッチが提供した新たな“遊びのプラットフォーム”

 そして特筆すべきなのは製品(Product)だという。

「まず、昔から人気のある任天堂オリジナルソフトを中心としたキラーコンテンツを提供して、ソフト面でも強みを発揮しています。それに加えて、特筆すべきはハード面です。Switchは携帯性、拡張性、起動の快適性、振動などのリアルな触覚、シェアプレイの利便性などに優れており、現代人のライフスタイルに応えた製品になっているといえるでしょう」(同) 

 つまり、現代のスマホ中心の文化のなかで、Switchは「遊び」に特化したプラットフォームが提供できていると有馬氏。部屋でのゲームを目的とするユーザー層だけではなく、屋外へのポータビリティを重視する層や、ゲームをコミュニケーションの手段と捉えるユーザー層も取り込めている点が幅広く受け入れられた要因なのだという。

「本連載では、たびたび“モノ消費”から“コト消費”へと現代人のニーズが変わったと強調してきましたが、“コト”を上手に演出する“モノ”のマーケティングとしては、任天堂はある意味で模範的な戦略をとったということです。Switchのヒットは“オーソドックスなマーケティングの成功例”と言いましたが、逆にここまでオーソドックスな手法での成功は珍しいでしょうね」(同)

 SNS時代のマーケティングを謳う様々な手法が紹介されている昨今、Switchの成功はオーソドックスなマーケティングを学ぶことにも意味があることを我々に教えてくれているようだ。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

武松佑季/フリーライター

武松佑季/フリーライター

1985年、神奈川県秦野市生まれ。編集プロダクションを経てフリーランスに。インタビュー記事を中心に各メディアに寄稿。東京ヤクルトファン。サウナー見習い。

Twitter:@yk_takexxx

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