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国費1兆円の勝算は?=次世代半導体に本腰―ラピダス

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ラピダスの動き

 次世代半導体の国産化を掲げて設立されたラピダス(東京)が、2027年の量産開始を目指して準備を本格化させている。かつて世界をリードした半導体産業の再興は経済安全保障にも直結し、国は1兆円近い補助金投入を決めるなど後押しする。ただ、技術や採算の面で課題が多く、勝算が立っているとは言い難い。

「来年4月の試作ライン稼働に向け、めどが立ちつつある」。小池淳義社長は4月2日、量産化の第一関門突破に手応えを口にした。この日、政府から新たに最大5900億円の追加支援が決まり、同社に投じられる国費は最大計9200億円に膨らんだ。

 ラピダスが目指すのは、世界でまだ量産されていない回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体。人工知能(AI)や自動運転といった最先端技術向けに今後需要が増えると見込まれる。回路線幅は微細なほど性能が高く、現時点で日本の半導体メーカーが作れるのは自動車や家電などに使われる40ナノの汎用(はんよう)品にとどまる。

 追加の補助金は、北海道千歳市の工場や生産設備のほか、製品を最終加工する「後工程」の技術開発に充てる。製造の中心「前工程」と分業するケースが多いが、ラピダスは両工程を一貫して手掛けることで納期を短縮し、先行する海外勢を一気に逆転したい考えだ。

 前工程の技術開発でも、2ナノの製造技術を持つ米IBMに派遣するエンジニアを年内に100人増員。販路開拓のため、IT企業が集積する米シリコンバレーに営業拠点も設立した。試作ラインの稼働までには、技術者約300人が千歳市に移り住む。

 しかし、「日の丸半導体」のシェア低下を狙って1986年に締結された日米半導体協定や、海外勢の台頭により、日本から多くの人材やノウハウが失われた。早大大学院の長内厚教授は「いきなり最先端の製品を作ることに不安がある」と指摘。台湾積体電路製造(TSMC)など競合相手をしのぐ大規模生産ができない限り、「コストメリットを出しにくいのではないか」と懐疑的だ。

 量産に向けた総投資額は5兆円に上る見通し。ラピダスにはトヨタ自動車やソニーグループなど最先端の国産半導体に期待する企業が計73億円を出資しているが、今のところ追加出資の声は聞こえてこない。量産開始まであと3年、乗り越えなければならない高いハードルがいくつも待ち受けている。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/05/06-05:46)

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