「病院をガタガタにした元凶は黒岩祐治神奈川県知事」と言い切るのは、数年前まで神奈川県立がんセンター(横浜市)に勤めていた医師。この人物のもとには、今でも同センターに在籍する医師たちから不満の声が次々に寄せられているという。そんななかで、同センターの経営を揺るがす大きな問題が起きていた。
神奈川県立がんセンターの目玉ともいうべき重粒子線治療を担う放射線治療科の医師が次々に退職していることがわかったのは、去る12月中旬だった。2017年度の初めには非常勤の重粒子線治療センター長のほかに、常勤医6人が在籍していた。ところが夏に1人、12月末に2人が退職。さらに2人が今月末で退職することを伝えており、2月以降、常勤医は1人しかいなくなるという緊急事態に追い込まれた。
休診も避けられない事態に
厚生労働省は重粒子線治療が「先進医療」となる要件として、「放射線治療専門医および放射線治療に専従する常勤医の2人以上の配置」としている。このままいけば2月以降は先進医療が外されることになるが、そうなるとただでさえ高い重粒子線治療の患者負担(約350万円)はまったく保険が利かない自由診療となり、その額は約500万円に跳ね上がってしまう。しかも、通常の放射線治療にもかなりの支障が出ると予想され、経営に大打撃を与えることは必至の情勢だ。
「神奈川県立がんセンターは16年度、12億7900万円の赤字を計上。期待していた重粒子線治療が高額のために、患者数が伸び悩んだせいですが、17年度、18年度はさらに悪化することが予想され、県財政への悪影響が懸念される」と、県関係者は顔を曇らす。