大学入試改革を先取りする中学入試の新タイプ入試とは
1月に入って、首都圏では茨城・千葉・埼玉、そして関西で始まった中学入試。いよいよ2月1日からは、東京・神奈川で入試が始まります。受験生を持つ家庭では、最後の準備に余念がないことでしょう。健闘をお祈りします。
さて、本連載ではこれまで、大学入試から日本の教育が変わるということをお話ししてきました。その狙いが、21世紀型能力の育成ですが、実は大学入試改革を先取りするかたちで、中学入試では新しい学力を測る試験が増加していることをご存知でしょうか? それが、新タイプ入試と呼ばれるものです。
中学入試の王道は、これまで算数・国語・理科・社会の4科目入試、あるいは算数・国語の2科目入試が大半でした(関西は社会を除く3科目入試が多い)。しかし、数年前から従来と異なる新タイプ入試を実施する学校が増えているのです。
そのひとつが、適性検査型入試。これは公立中高一貫校ができたときに導入された試験で、国語・算数・理科・社会といった単独の教科知識を問うのではなく、複数の教科を横断して出題されるのが特徴。出題範囲は小学校で学習した内容ですが、習った知識を活用し、組み合わせて解答を導く思考力、複雑に見える問題文を素早く的確に読み解く読解力などが求められます。これに作文を課す学校もあります。これは、まさしく今回の教育改革で進められようとしている、思考力・判断力・表現力を問う問題であり、公立中高一貫校は入り口の部分では教育改革を先取りしてきたといえるでしょう。
私立中高では思考力重視で、21世紀型教育を先取りしている学校も
一方、私立中学入試でも、教科横断型ではありませんが、学校によっては以前から知識を問うだけでなく、知識を活用して思考し、それを自分の言葉で表現することが求められる問題が出題されてきました。
たとえば、武蔵中学校(東京都)の理科の入試問題で出題される「おみやげ問題」は有名です。試験問題とともに、画鋲やネジといった実物の「モノ」が入った袋が配られ、実際にそれに触ったり、観察してわかったことを自分の言葉にして答えることが求められます(「モノ」は持って帰っていいので、通称「おみやげ問題」といわれています)。武蔵は、教育方針のひとつに、「自ら調べ自ら考える力ある人物」の育成を掲げており、この問題もそうした方針を体現したものだといえるでしょう。