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65歳まで雇用義務化で、他世代の賃金抑制…月給40万超えが50歳へ後ろ倒し

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
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65歳まで雇用義務化で、他世代の賃金抑制…月給40万超えが50歳へ後ろ倒しの画像1「Thinkstock」より

 今年の春闘では経団連が3%の賃上げを表明し、注目されている。また、人手不足もあって新卒の初任給を引き上げる企業も増えているが、その一方で中高年世代の給与が下がっている。

「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)の一般労働者の「年齢階級による賃金カーブ」(所定内給与額、男性)の時系列の比較でも明らかになっている(労働政策研究・研修機構作成)。「勤続0年」の給与水準を100とした場合の1995年と2016年の年齢ごとの比較では、20代前半から上がり続けるが、35~39歳から賃金カーブの乖離幅が大きくなる。40~44歳になると1995年は200(2倍)に達し、さらに上昇し続けるが、2016年は45~49歳になっても200を下回り、50~54歳になってようやく200を超えるが、以降は下降していく。

 22歳の大学卒の新卒初任給は約20万円であるが、95年は40歳を過ぎたあたりから40万円を超えて上昇するのに対し、2016年は50歳を超えないと40万円に達しないということだ。つまり40代以降の給与が以前より下がっているだけではなく、年齢を重ねるごとに給与が上がる“年功賃金神話”が崩れていることを意味する。

 給与減少の背景には、多くの企業で社員の高齢化が進んでいるという事情もある。経団連の調査によると、団塊ジュニア層やバブル期の大量採用層を含む40代前半~50代前半層が人員構成上で最も厚い年齢層となっている企業の割合が、6割に達している(経団連の16年5月17日付報告書「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる現状・課題と取組み」)。

 40代以降の中高年世代の賃金減少はいくつかのシンクタンクも指摘している。では、どのようにして下げているのか。大和総研は40代労働者のうち「部長」「課長」の割合が低下していることに着目し、その理由をこう分析している。

「企業は40代雇用者の昇進を遅らせる、昇進できる人数を減らす、といった取り組みを行っている可能性がある。なお、40代には団塊ジュニア世代が含まれるため、人件費全体に占める割合も大きい。企業は、ボリュームゾーンを形成する雇用者の昇進を遅らせることで、人件費の削減を図っていると言えそうだ」(「194回日本経済予測」17年8月17日)

 また、みずほ総合研究所は賃金の抑制は世代間の人件費シフトだと推測する。

「改正高年齢者雇用安定法が施行され、65歳までの雇用延長が義務化されたことも影響しているとみられる。すなわち、高齢者の人件費を捻出するため、企業がほかの世代の労働者の賃金ベースを緩やかにすることにより、全体の人件費増大を抑制したと考えられる」(「みずほリポート賃金はなぜ上がらないのか」<17年10月6日>)

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