先進国の中で労働生産性が低い日本
日本人は労働生産性が低い、特にホワイトカラーの生産性が低いと、よくメディアで報じられます。そして、その後に続くコメントとして、「日本人はもっと効率を上げる必要がある」という意見を聞くことがあります。しかし、私はそれを耳にするたびに「ホントかな」と思っています。
労働生産性を国際比較した統計データを見ると、確かに日本人の労働生産性は先進国のなかでは低い部類に入ります。たとえばOECD(経済協力開発機構)の2014年のデータによれば、日本の労働生産性はOECD加盟34カ国のうち21番目です。また、G7(先進7カ国)のなかでは最下位で、しかも20年連続です。
また、就業時間1時間当たりの労働生産性を見ると、日本は41.3ドルでやはり21位です。これに対してドイツは63.4ドル、フランスは65.1ドルでした。つまり、日本の労働生産性はドイツやフランスの3分の2程度しかない、というのが実態です。
さらに日本人は年間1735時間働いているのに対し、ドイツは1400時間弱、フランスは1500時間足らずで、日本人のほうが15から25パーセント長く働いています。しかも日本人の夏休みの平均はおよそ1週間であるのに対して、ドイツ人、フランス人は1カ月ほどと、4倍の開きがあります。
これらのデータを見れば、確かに日本人の労働生産性が低いといえます。しかし、それは本当に我々日本人一人ひとりの仕事のやり方が非効率なことが原因なのでしょうか。我々には、短時間でアウトプットを出す能力がほかの国に比べて低いのでしょうか。
私の答えはノーです。これからその理由をお話していきます。
労働生産性を上げる方法
それには、まず労働生産性というものの意味を見ていくところから始めることにしましょう。
労働生産性とは、労働者ひとりがいくらの価値を生み出したのか、という指標です。生み出した価値は、付加価値と呼ばれます。付加価値は、漢字では付け加えた価値と書きます。馴染みのない用語かもしれませんので、少し説明します。
たとえばあるスーパーマーケットが、70円で仕入れたものをお客さんに100円で売ったとします。この差額の30円が付加価値です。70円で仕入れたものを、お客さんに100円で買ってもらえる工夫をした、つまり価値を付け加えたわけです。この売上と仕入れ価格の差額の30円は、粗利益と呼ぶこともあります。
付加価値は、売上金額ではなく、粗利益であることに注意してください。