1990年代中頃から2005年頃まで続いた就職氷河期に就職活動をした人の賃金は、上がっていない――。
2月13日付日本経済新聞電子版記事『賃上げ、取り残される団塊ジュニア 若い世代優先で』は、40代の賃金が2016年では12年に比べて減り、正社員でも賃上げの流れに取り残されていると分析している。また、非正社員のままの氷河期世代の苦境については、さまざまな角度から取り上げられることも多い。
なぜ、氷河期世代は苦境に追い込まれているのか。「正社員になれなかったのは運が悪かった」ということではない。「自己責任」でも、もちろんない。正社員になっても給料は上がりにくいのだ。若い世代の賃上げのほうが、優先されるのだ。
もちろん採用難の今、新卒初任給を上げなければいけないというのは、わからなくもない。 そんななかで、氷河期世代の給料は増えない。不本意な仕事に就き転職を繰り返し、そのプロセスのなかで給料が下がっていくケースも多い。氷河期世代は安く使い倒せる。そんな仕組みが、できあがっている。
その究極のかたちが、派遣社員や契約社員だ。5年で無期転換をしなければ雇用打ち切り、多くの場合は無期転換がなされない。正社員化は名ばかりで、なれないことも多い。しかも時給制の場合が多い。
なぜ、氷河期世代は低賃金のままなのか。正社員にはなれないのか。
意図的に低賃金労働者はつくられた
就職氷河期に、企業の採用は少なかった。現在では毎年1000名規模で採用するメガバンクも、当時は採用が少なく、狭き門だった。大手メーカー、鉄道会社なども採用を絞っていた。その表向きの理由とは、団塊の世代がまだ従業員として社内に残っており、人手が足りている、というものであった。そのために採用を抑制するしかなく、ゆえに若い人を雇えない、というものだった。一般の公務員の採用抑制の理由も同じようなものだった。上の世代の人数が多く、新規採用ができないということだった。
その一方で、非正規雇用は増えていった。バブル崩壊前の1986年には労働者派遣法が施行。特定の業務のみの派遣を認めた。次第に適応可能な業種は増えていき、不景気のどん底の1999年には「ポジティブリスト」から「ネガティブリスト」へと転換、派遣業を行ってはいけない職業というのが決まり、原則的にどの仕事も派遣で働くことができるようになった。2004年には製造業での派遣も解禁された。