東芝の2018年3月期決算(米国会計基準)は、純利益が8040億円の黒字(前期は9656億円の赤字)だった。4年ぶりに黒字転換し、7年ぶりに最高益を更新した。さらに19年3月期の純利益は1兆700億円と連続最高益を見込む。もし、純利益が1兆円を超えれば、トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンクグループ、本田技研工業(ホンダ)に続いて5社目となる。
第三者割当増資により、3月末時点の自己資本は7831億円のプラスで、ようやく債務超過を解消した。債務超過が続いていれば上場廃止になるところだった。
崖っぷちに追い込まれていた東芝が、数字上では奇跡の復活を遂げたことになる。上場企業のうち、18年3月期決算最大のサプライズといっていいかもしれない。
しかし内実は、業績がV字回復したことによる最高益ではない。連結子会社だった米原発大手ウエスチングハウス(WH)の米持ち株会社の株式や債権の売却益2562億円が寄与したものだ。また、米国の減税効果で税負担も減少した。
売却手続き中の東芝メモリは連結対象から外して決算を集計した。東芝メモリの売却益9700億円を計上するという前提で、今期の純利益は1兆700億円を予想している。
東芝は東芝メモリを米投資ファンドのベインキャピタルなど日米韓連合に6月1日付で売却すると5月17日に発表した。遅れていた中国当局の独占禁止法の審査が終わり、計画が承認された。東芝メモリは当初計画通り、総額2兆円で売却される。
東芝は不正会計の発覚を受けて原発や家電事業を見直したことから、15年3月期に赤字に転落。16年3月期と17年同期も、米国の原発事業の不振が響いて赤字だった。
東芝は原発と半導体を経営の2本柱に据えてきた。だが、18年同期は原発のWHを売却、19年同期は半導体を売却し、連続最高益を更新するのだから運命の皮肉である。
今後はインフラ部門に注力するが、スマートメーターの製造子会社を手放したエネルギー事業や、水処理施設などのインフラ事業は振るわなかった。東芝は何を成長の柱とするのか。その方向性は見えてこない。