カラオケボックスの代名詞的存在だったシダックスが、カラオケボックスの運営から撤退した。運営会社で100%子会社のシダックス・コミュニティーの株式81%を6月7日付で「カラオケ館」などを運営するB&Vに売却した。
不採算店舗を集めたシダックストラベラーズコミュニティー(出資比率35%)も譲渡した。2社合計の譲渡債権は199億円。株式・債権の譲渡価格は総額49億円。貸倒引当金の戻りを考慮しても、売却によって38億円の損失が発生する見込みだ。これによって、業績の足を引っ張ってきたカラオケ事業から撤退した。
シダックスは1959年、富士天然色写真(現富士フイルムホールデイングス)の社員食堂の運営を請け負うことから始まった。91年、運営していたファミレスを改装し、レストランカラオケの実験店をオープン。93年に、カラオケ事業を展開するシダックス・コミュニティーを設立し、本格参入した。
ピーク時には全国に300店舗(1万6000ルーム)以上を展開、2008年3月期の売上高は630億円、セグメント営業利益71億円をあげ、カラオケ事業が同社の主柱になった。
しかし、食事・飲み物の持ち込み可や室料ゼロ円の「格安カラオケ」、また「一人カラオケ」など新業態のカラオケ店が台頭。シダックスはグループ使用を想定し、広い部屋を次々設けていただけに、客単価の下落で採算悪化に歯止めがきかなくなった。
カラオケ事業のリストラに追われ、シダックストラベラーズコミュニティーに不採算店を集約した。
シダックスの18年3月期の連結決算は、売上高は前期比3.7%減の1428億円、営業利益は同7.9%減の11億円、最終損益は13億円の赤字(17年同期は32億円の赤字)だった。最終損益を5億円の黒字としていたが、一転して赤字となった。3期連続の最終赤字となったのは、レストランカラオケ事業の不振が足を引っ張ったためだ。
かつてのドル箱は惨憺たる成績に終わった。18年3月期末の店舗数は182店。売上高は前期比11%減の176億円、セグメント営業損益は10億円の赤字(17年3月期は5億円の赤字)と赤字幅が拡大した。好転する見込みが立たないことから、カラオケ事業からの撤退を決めた。カラオケ事業の売却損をそのまま放置すれば、50億円まで減少した純資産がさらに目減りするおそれがあった。
今後は、日本政策投資銀行や三井住友銀行などが出資する投資事業有限責任組合を引受先として25億円の優先株を発行し、自己資本を増強。創業事業である給食などフード事業に経営資源を集中する。