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江川紹子の「事件ウオッチ」第106回

がん患者へのヤジ、過労死遺族への暴言…“命”の問題を軽視する安倍自民の責任と罪

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参考人であるがん患者にヤジを飛ばした自民党の穴見陽一衆議院議員(写真:読売新聞/アフロ)

 ヤジというより、暴言と呼んだほうがいいのではないか。

 自民党の穴見陽一衆院議員が、衆院厚生労働委員会で受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の審議中に、参考人として出席していた肺がん患者が意見を述べていたのに対し、「いいかげんにしろ」と言い放った問題である。

与野党議員の胸に響いた、故・山本孝史議員の代表質問

 委員会として招いた人に対する非礼はもとより、ステージ4の患者が、よりよい制度づくりのために、まさに命を削って話をしている時に、どうしてこんなことが言えるのか。国会議員としての資質以前に、人間性が疑われるのは当然だろう。

 批判を受けた穴見氏は、Facebookと自身のホームページに「お詫び」と題する短い文を掲載したが、内容は「不快な思いを与えたとすれば…深くお詫び申し上げる」といった条件付きの謝罪。「不快な思い」を与えていないわけがない。記者会見も開かず、このような「謝罪もどき」をインターネット上にアップしただけで、「謝罪した」と報じるマスメディアは、まったくどうかしているのではないか。

 しかも、この「謝罪もどき」には、「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという想いで呟いたもの」という言い訳が続いている。「差別」とは、「本人の努力によってどうすることも出来ない事柄で不利益な扱いをすること」(東京人権啓発企業連絡会HPより)。

 有害な受動喫煙を防ぐために室内を禁煙・分煙することを、「差別」と言ってはばからない穴見氏は、こんな基本的な言葉の意味がわかっていないらしい。好きな所でタバコを吸えないこと、あるいは飲食店が受動喫煙対策をしなければならないことに、喫煙者として、飲食店チェーン創業者の息子として、ひたすら被害者意識を募らせているだけだろう。一私人ならそれでも構わないが、こういう人が「全国民の代表者」たる国会議員でいられては、本当に困る。

 そう慨嘆しながら、私はかつての国会で見た、今回の暴言とはまったくベクトルを異にする2つの光景を思い起こしていた。ひとつは、2006年5月22日に参議院本会議で故・山本孝史議員(民主党)が、がん対策基本法と自殺対策基本法の早期成立を訴えた国会質問。もうひとつは、同年暮れに亡くなった山本氏のために、07年1月23日にやはり同院本会議で、自民党の尾辻秀久参院議員が行った追悼演説だ。

 社会保障に関わる問題に取り組んでいた山本氏は、在職中に胸腺がんに罹った。06年5月22日の代表質問で、自分ががんに侵されていることを告白。次のように述べて、がん対策基本法の成立を急ぐよう求めた。

「がん患者は、がんの進行や再発の不安、先のことが考えられないつらさなどと向き合いながら、身体的苦痛や経済的負担に苦しみながらも、新たな治療法の開発に期待を寄せつつ、一日一日を大切に生きています。私があえて自らがん患者だと申し上げましたのも、がん対策基本法の与党案と民主党案を一本化し、今国会で成立させることが日本の本格的ながん対策の第一歩となると確信するからです」

 さらに、自殺対策基本法の早期成立の必要性も訴え、政治の責任を強調した。

「私は、大学生のときに交通遺児の進学支援と交通事故ゼロを目指してのボランティア活動にかかわって以来、命を守るのが政治家の仕事だと思ってきました。がんも自殺も、ともに救える命がいっぱいあるのに次々と失われているのは、政治や行政、社会の対応が遅れているからです」

 与野党議員から、党派を超えて大きな拍手が起き、それは山本氏が自席に戻った後も続いた。演説の後、山本氏は報道陣の取材に対し「(がん患者には)限られた時間しか残っていない。(対策は)次の国会でいいとは思えない」と語った。

 この訴えは、与野党の議員に響いた。読売新聞は、「命を削ってまで活動を続ける姿がきっかけとなって与野党が歩み寄り、この翌月にがん対策基本法が成立した」(2008年1月22日付同紙追悼記事より)と伝えている。自殺対策基本法も、同じ時期に成立した。

国会の劣化を加速させる「魔の3回生」たち

 この2つの法律の成立に共に奔走した尾辻氏は、追悼演説の中で、「山本先生はわが自由民主党にとって、最も手強い政策論争の相手でありました」と称え、山本氏の代表質問について、こう振り返った。

「いつものように淡々とした調子でしたが、先生は抗がん剤による副作用に耐えながら、渾身の力を振り絞られたに違いありません。この演説は、すべての人の魂を揺さぶりました。議場は温かい拍手で包まれました。私は今、その光景を思い浮かべながら、同じ壇上に立ち、先生の一言一句を振り返るとき……。万感、胸に迫るものがあります」

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