日産自動車は6月26日、横浜市のパシフィコ横浜国立国際会議場で株主総会を開催した。株主総会で議長役のカルロス・ゴーン会長は、「アライアンスの持続可能性を担保する手段は複数考えられるが、会長として日産の業績向上と株主の利益を守ると約束する」と“日本向け”のコメントを発表した。
これに先立つ6月22日、三菱自動車工業の株主総会でもゴーン氏は議長を務め、「日産や三菱自がルノーの完全子会社になる可能性はゼロだ」と述べた。
同じく議長を務めたルノーの株主総会や、外国のプレスに語った内容とはかなりニュアンスが違う。6月27日付日本経済新聞は「ゴーン氏、株主に『三方美人』」の見出しを掲げた。
日産の“顔”は、依然としてゴーン氏だ。CEO(最高経営責任者)職は社長の西川廣人氏に譲ったが、現在でもゴーン氏が日産の事実上のトップである。それにもかかわらず、無資格検査問題について、ゴーン氏の公式・非公式いずれでも謝罪がないことに対して、同氏に真意をただす株主の質問があった。ゴーン氏は「日産のボスは西川社長だ。ボスの責任を尊重しなければならない。責任逃れではない」とし、謝罪しなかった。
SUBARUは、同じ問題で吉永泰之社長兼CEOが退任。CEO職も返上し、会長に退いている。
日産では、株主から新車の無資格検査問題に関して厳しい質問が出たが、西川氏は「心配を掛け、大変申し訳なく思う」と謝罪しただけで、自らの責任には言及しなかった。「役員報酬の一部を返納済み」としているが、いくら返納したかも明らかにしていない。
2017年度役員報酬は、西川氏が前年度比26%増の4億9900万円、ゴーン氏は33%減の7億3500万円だ。ちなみにゴーン氏は、日産、ルノー、三菱自の3社から合計で19億700万円の役員報酬を得ている。
日本にほとんどいないゴーン氏が日産から7億3000万円、三菱自から2億2700万円、計9億5700万円を得た。
「日産からの7億3000万円は、勤務実態からみて、実質的に最高の役員報酬ではないか」(自動車担当のアナリスト)
無資格検査問題で絶対に謝罪しないゴーン氏に、日本のマーケット軽視の姿勢を感じる人は多いようだ。それにもかかわらず、なぜ自動車担当記者たちはゴーン氏に“謝らない理由”を徹底的に問わないのだろうか。日産が有力なスポンサーであることは事実だが、経済ジャーナリズムの堕落といわれても返す言葉はないだろう。
(文=編集部)