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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(6月第3週)

マンションに住んではいけない!? 耐震修繕もできず、資産価値もない物件多数

マンションに住んではいけない!? 耐震修繕もできず、資産価値もない物件多数の画像1
やたら安い物件に注意。(「Thinkstock」より)
毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)と「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)の中から、今回は「東洋経済」の特集をピックアップし、最新の経済動向を紹介します。

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「週刊東洋経済 6/8号」の特集は『マンション時限爆弾 老朽化にどう対応する』だ。全国で約600万戸、1400万人が住み、すっかり社会的に定着している分譲マンションが直面しているのが、建物の老朽化と住民の高齢化という「二つの老い」だ。

「約600万戸のうち、すでに5分の1が築30年以上。今後10年でさらに老朽化は加速し、全体の3分の1を占める見通しだ。さらに、築40年超のマンションでは、60歳以上のみの老人世帯が半数に至るなど、住民の高齢化も進んでいる。今も4割のマンションで発生している管理費の滞納。住民が次々と去り、賃貸化、空室化が進む」。その果てには、廊下にゴミがあふれて照明もつかない「スラム化」する……という、「時限爆弾」のような存在の老朽化マンションを特集している。

『Part1 ほぼムリな建て替え』では、「建て替え」の現状について紹介している。「十分な耐震性の認められる新耐震基準(1981年)以前に建てられた106万戸の建て替えもしくは大規模修繕は、待ったなしの状況だ。ただ、2年後に建て替えられる上野下アパートのような建て替え可能な物件は、ほとんど残されていない」という。「建て替え」には区分所有者の高齢化に容積率制限、煩雑な手続きなど実現には何重ものハードルがあるからだ。

『Part2 資産価値を決める大規模修繕』では、今後、6割強のマンションが不足に陥ると見られている修繕積立金と、業者丸投げで割高になりがちな大規模修繕について特集している。「分譲当初、デベロッパーや管理会社が作成した長期修繕計画には、事業者にとって都合のよい記載が散見される。そこには、『大規模修繕は専門的な内容で、素人の管理組合にはわからない』という発想がうかがえる」だけに注意が必要だ。

 大規模修繕工事の費用は、「外壁が塗装壁で1世帯60万~80万円、タイル壁だと1世帯80万~100万円が1つの目安となる(50~100戸のマンションの場合)。タイル壁は欠けたり浮いたりしたタイルを剥がし、下地を補修し張り直すという手間がかかるため割高になる。ただ、工事の内容を最適化すれば、工事費を納得いく水準にすることは可能だ」という(東洋経済オンライン『間違いだらけのマンション修繕』 )。

 『Part3 揺れる管理組合』では、機能不全が深刻化する管理組合の悩みに迫っている。「多くのマンションで、管理組合の役員のなり手不足が深刻化しているが、引き受けない最大の理由が『高齢のため』である。管理組合が機能不全となると、管理費や修繕積立金の滞納につながりやすい」。だが意欲のある管理組合の中には、こうした事業者支配から脱し、主体的に管理に取り組もうとする動きも出ている。マンションの資産価値を生かすも殺すも、主役である住民の意識次第なのだ。

『Part4 とびきりの難物 タワーマンション』では、建物劣化への対策が確立していない。プールなどの共用施設の維持が大変。高層階と低層階で経済格差が激しい……などの課題が未知数のタワーマンションの問題を取り上げ、「21世紀最大の都市課題になる」と指摘する。

 課題山積みのタワーマンションはさておき、遅々として進まない日本のマンションの建て替え問題。解決策は、実は政府次第というところがある。特集にあるように、都心の好立地なマンションほど建設当時よりも建物の大きさを決める容積率が厳しく制限されており、建て替えする場合には、規模縮小をせざるを得なくなってしまうケースが多い。また、建て替え決議には区分所有者の5分の4の同意が必要となるなど、ハードルが高すぎる。

 特集記事『米・韓に後れ取る日本の建て替えスキーム』では、ソウル市内で新規に供給されるマンションのうち3割は、法的な強制力で建て替えられたもの。マンション建て替えを公共性の高い事業と位置付ける行政が、一連の手続きに介入している事実を紹介している。また、米国では「建て替えたマンションに再び住むこと」が前提の日本とは異なり「違う場所に移住すること」も選択肢としている概念があることを紹介している。

 日本でとくに求められているのは(特集では前面に押し出されてはいないが)、建て替え要件の緩和と、より大きな建物を建設できるようにするための容積率の緩和だ。

 しかし、現在、政府が検討しているのは、東京・大阪・名古屋などの大都市圏に「アベノミクス戦略特区」を設け、大胆な規制緩和を進めるという産業競争力会議での構想だ。これは都市の再開発を促すための土地利用の視点にすぎず、より規模を広げた起爆剤がなければ、にわかに注目されている“不動産の活性化”にはつながらないだろう(容積率をどこまで緩和するかは次の問題となる)。アベノミクス成長戦略の注目点の1つだ。

 それでも、今回の特集はデベロッパーの立場に立ったマンションのまぶしい一面ではなく、その影となる問題点を整理しており、社会派の東洋経済の本領発揮といえるのではないか。
(文=松井克明/FCP)

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