米国の国防総省は、「情報先端研究プロジェクト活動」(IARPA)というプロジェクトを進めている。同省はこれを、敵国を圧倒するような情報優位性を得るためのハイリスク・ハイリターンの研究活動と位置づけている。
IARPAは、さらに細かいプログラムに分かれている。そのひとつが、オープン・ソース・インディケーター(OSI)と呼ばれるものだ。
OSIが目指すもの。それは、政治危機、人道危機、集団的暴力、暴動、大量移民、病気発生、経済不安、資源不足、自然災害の対応といった、重大な事件を予測し、察知するというものだ。同プログラムのマネジャーで統計予測やリスク分析の研究家であるジェイソン・マセニー氏は、「ニュースを先取りする」方法の向上を目指すと意気込む。
では、どうやって、未来の重大事件を予測しようとしているのか。
このプログラムで活用しようとしているのは、ウェブ検索、ブログ、ツイッター、インターネットのトラフィック、ネット接続カメラ映像、金融市場、ウィキペディアの編集、といったものだ。人々が発信するこれらの情報の総体は莫大なものになる。そのビッグデータを分析すれば、なんらかの社会的兆候が見えてくるかもしれない。マセニー氏たちは、その可能性をこのプログラムで見いだそうとしているのだ。
人々が発するこれらの情報は、基本的に公開されているもの。しかし、それを国が活用して将来予測をしようとするということに対して、驚きや批判の声も上がっている。同プログラムは、このような声が出るのを見越してか、収集して分析する情報の対象を米国内でなくラテンアメリカ諸国での情報にしている。しかし、このプログラムが成功して、「ニュースを先取り」することができれば、それは自国民の発信情報をもとに国が情勢を予測可能であることを示すことになる。
マセニー氏は今年2月の「ニューズウィーク」(ザ・ニューズウィーク・デイリー・ビースト社)の記事で、3年間の研究では、どのようなことが予測可能となるかがわかるという程度の成果にとどまることを示唆している。
2011年から始まったこのプログラムの期限は3年間。プログラム終了時点での“成果”は、どのようなものになっているだろうか?
(文=漆原次郎/フリーライター)