これにより、ソフトバンクによるスプリント買収がほぼ確実になる見込みとなった。当初予定の買収総額を約15億ドル上積みすることで、6月11日にスプリントと合意していたソフトバンクだが、ディッシュが断念したことにより、6月25日のスプリント株主総会で買収の賛成を得られる模様だ。
ソフトバンクがスプリントを買収すれば、国内で傘下に収めるイー・アクセス、ウィルコムを合計すると総契約数は9710万件となる。6000万強のNTTドコモをはるかにしのぎ、アメリカ第1位のベライゾン(9893万件)に肉薄することとなる。孫社長の野望である世界進出に向けて、大きく前進することになるだろう(ただし、スプリント傘下の通信会社・クリアワイアはディッシュとの争奪戦が続く。
ソフトバンクにおける世界戦略の成功を受けて、ライバルであるKDDIが悔しい思いをしているのかと思いきや、実はそうではないらしい。梅雨空のムシムシした中、KDDIの田中孝司社長は涼しい顔をしているというのだ。
実は、KDDIはアメリカ進出に興味はなく、市場開放が進むミャンマーをターゲットにしているというのだ。ミャンマーでは携帯電話事業の認可を海外キャリアに開放しようとしており、その認可入札の結果がいよいよ6月27日までに発表されるという。
入札に関しては、12の企業連合が名乗りを上げており、KDDIは住友商事とミャンマー情報通信技術開発会社と組んで参加。ほかにシンガポール・テレコミュニケーションズ、インドのバーティ・エアテル、チャイナモバイルなどが参加していたが、競合とされていたキャリアが降りたことで、俄然、KDDIが落札できる可能性が高まっているのだという。
入札では2連合に対し、15年間の事業免許が付与される。ミャンマーの人口は6000万人といわれており、携帯電話の普及率は10%以下という。今後、経済発展が見込めれば、契約者も相当数確保でき、それこそ数千万のレベルで新規顧客が増えることも夢ではない。
KDDI関係者は「かつてボーダフォンが日本から撤退したように、海外のキャリアが他国のキャリアを買収してうまくいったためしはない。インドのキャリアに出資しているNTTドコモも失敗しているし、ソフトバンクのスプリント買収も成功するのは厳しいだろう。その点、うちは買収とは異なり、ミャンマーでキャリアをゼロから立ち上げるという点で、かなり優位な展開ができそうだ」と語る。
LTEエリア誤記問題や通信障害など、ユーザーからの信頼が揺らぎつつあるKDDI。ミャンマーへの進出で、ここ最近の失態を挽回できるか注目だ。
(文=杉浦一志)