今回は菅原氏に、
・なぜ紫外線に当たってはいけないのか
・なぜ日光浴が推奨されてきたのか
などについて話を聞きました。
なぜ紫外線に当たってはいけないのか
–「紫外線は皮膚に害を与える」とよく耳にしますが、どのような影響を及ぼすのでしょうか。
菅原由香子氏(以下、菅原) 強い日差しに数時間当たると、皮膚が赤くなる反応をサンバーンといいます。その後、3~4日程度で皮膚は褐色化していきますが、その反応をサンタンといい、このサンバーンとサンタンを総じて「日焼け」と呼んでいます。日光に当たって皮膚が赤くなる人もいれば、すぐに褐色化する人もいます。これは皮膚の質に差があるため、影響にも違いが生じるのです。
日焼けした皮膚が赤くなるのは、皮膚のDNAに傷がついたことを意味しています。多少DNAが傷ついても、皮膚はその傷を元通りに修復させる力を持っています。ところが、あまりに強い日焼けをしてしまうと、修復遺伝子の酵素の働きが追いつかなくなります。DNAに傷が残り、適切に修復されなかったものが突然変異として皮膚がんになるのです。このように、強い紫外線は皮膚がんの元になることを認識しなければいけません。
–強い紫外線に当たると、皮膚の修復機能を超えてダメージを与えるということでしょうか。
菅原 がんを抑制する遺伝子の一種に、「p53遺伝子」があります。p53遺伝子は、がん化した細胞にアポトーシス(細胞死)を起こさせ、腫瘍の成長を妨げるといわれています。ところが、日光によく当たる箇所の皮膚では、衣類に覆われている部分と比較するとp53遺伝子の変異が多く起こっていることがわかっています。しかも、そのp53遺伝子の変異は、加齢とともに増加します。つまり日光によく当たるほど、がんの抑制効果が減退すると考えられます。