なぜ日光浴が推奨されてきたのか
–かつては、日光浴をすることで健康の増進が図れるといわれていましたが、それは間違いだったのでしょうか。
菅原 日光浴は気持ちをリラックスさせる効果があります。部屋に閉じこもっているよりは、日光に当たってストレスを発散させたほうがよいという考え方は間違いではありません。しかし、皮膚科学的な見地から申し上げるなら、十分な紫外線対策をした上で日光浴をしなければなりません。
また、くる病というビタミンDの欠乏による骨格の発育障害があります。骨が軟らかく、発育が不完全なため曲がってしまう病気です。皮膚に紫外線を当てるとビタミンDが生成されるため、クル病には日光浴が必要と考えられてきました。しかし、1日に必要なビタミンDは、日光を手のひらに2~3分浴びるだけで生成できます。長時間、日に当たる必要性はありません。
–これから紫外線が強くなる時期ですから、より注意が必要ですね。
菅原 紫外線対策が最も重要なのは、7~8月の真夏です。地上に到達する紫外線量は、オゾン層の厚さに関係してきます。オゾン層は春頃日本付近には多く、夏から秋にかけて少なくなります。昨今、「5~6月に一番紫外線が多い」といわれていますが、それはオゾン層にほとんど吸収されない紫外線A波(UVA)のことです。皮膚がんをもたらす紫外線B波(UVB)はオゾン層に吸収されやすいので、春は少なく夏に多くなります。したがって気をつけなくてはいけないのは、やはり真夏です。時間帯で見ると、お昼時の12時前後が最も多く、午後2時くらいまでがピークです。日の出や日の入りの時間帯は紫外線の影響はほとんどありませんが、5月の朝8時頃の紫外線は、冬の正午と同じくらいです。また、曇りの日でも快晴の日の60%くらい、雨の日でも30%くらいの紫外線量があります。
またオフィス街ではアスファルトコンクリートからの反射が加わって、紫外線量が20%程度増加します。これは冬の雪山で日焼けをする状況とよく似ています。雪は普段の地面と比較して2倍近く反射するといわれています。季節は冬でも、雪が積もれば夏のような紫外線量になるのです。私は普段から帽子と腕カバーと日傘を欠かしませんが、最近ではUVケア商品も豊富にありますから、ご自身に合った対策を心がけるようにしてください。
–ありがとうございました。
(構成=尾藤克之/ジャーナリスト、経営コンサルタント)
●尾藤克之(びとう・かつゆき)
東京都出身。ジャーナリスト/経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。