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「アベチャンネル」化するNHK!受信料使って安倍首相と自民党の見解を垂れ流し&礼賛!

文=林克明/ジャーナリスト
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「アベチャンネル」化するNHK!受信料使って安倍首相と自民党の見解を垂れ流し&礼賛!の画像1NHK包囲行動の様子
 安倍政権と自民党にべったりの報道を続ける日本放送協会(NHK)に対し、NHKのOBや市民ら約350人が11月7日、東京・渋谷のNHK放送センター前に集まり「“アベチャンネル”はゴメンだ! 怒りのNHK包囲行動」と題した抗議活動を行い、渋谷の街をデモ行進した。

 NHKといえば、『クローズアップ現代』でやらせ問題が発覚し、これに関してBPO(放送倫理・番組向上機構)が11月6日に意見書を公表して話題になったばかり。やらせについて批判されたのは当然としても、意見書の最大のポイントは、自民党がNHK関係者を呼んで事情聴取したことは「政権党による圧力そのもの」、高市早苗総務大臣がNHKに対して「厳重注意」したことも問題視された。

 報道弾圧としては、『報道ステーション』(テレビ朝日系)のコメンテーターであった古賀茂明氏が、3月27日の生放送で「官邸から圧力をかけられた」と告白。また、6月25日の自民党勉強会で、大西英男衆院議員が「マスコミを懲らしめる」との発言をして批判を浴びている。

 このような経緯もあるので、政府や自民党が報道機関に対して圧力をかけていることを批判する貴重な意見書といえるだろう。

 さらに意見書は「干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も浸食され、やがては失われる」とエールを送った。

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開き直る総務大臣

 ところが、圧力をかけた側の政府・自民党には反省の色が見られず、圧力を受けた側のNHKも抵抗する気配すらない。

 BPOから批判された高市総務大臣は、「放送法を所管する立場から、必要な対応を行った」という趣旨の弁を述べており、反省どころか開き直っている。

 一方のNHKは、やらせ疑惑については謝罪したものの、BPO意見書で指摘された「干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持」はまったく示しておらず、公共放送ではなく“アベチャンネル”として機能しているのが実態だ。だからこそ「毅然とした姿勢と矜持を示せ」と一般市民がNHKまで押し掛けて訴えたことに価値がある。

 放送センター西門前で始まったリレートークでは、東京狛江市から駆け付けた女性市民がマイクを握り、こう述べた。

「(報道に関しては)NHKは政府の広報チャンネル。でも、人のいい田舎のお爺ちゃん、お婆ちゃんは、報道が事実だと受けてしまう」

 素朴な表現だが、実は重大なポイントである。政府や与党自民党の応援といえば、読売新聞や産経新聞、その系列のテレビ局も同じだが、報道が信用できなければ御用新聞を購読しなければいいし、テレビを見なければいい。また、民放のテレビ番組には企業がスポンサーとしてカネを払っており、視聴者の懐は痛まない。

 だが、「NHKは民間テレビ局より真面目に報道している」と思い込んでいる人がかなり多いし、視聴者から受信料を徴収しているところが違う。カネを取られて政府と与党の宣伝ばかりされるようでは、たまらないのである。

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政治部記者は安倍首相の独演会を補佐

 報道が政権べったりであることは、リレートークに参加したNHKの元ディレクターで『中学生日記』などを手掛けた小滝一志氏の話を聞くとよくわかる。小滝氏はNHKのOBも含む「放送を語る会」のメンバーで、「語る会」は今年5月から5カ月間、安保法制関連を中心にNHK番組をモニターし、他局と比較している。その小滝氏は次のように語った。

「『ニュース7』と『ニュースウオッチ9』は、外部の専門家や学識経験者の話をスタジオで紹介せずにNHK政治記者などが解説することに特色があります。例外なのは安倍首相です。戦後70年談話が出された8月14日には安倍首相をスタジオに招き、実に40分強の独演会をやらせました。意見が分かれる問題は、多様な意見を伝えるという放送法の趣旨に完全に反しています」

 この「首相独演会」では、ホステス役を務めた政治部記者が、最大限に首相を持ち上げるというサービスがNHKスタジオで展開された。

 さらに、衆議院の特別委員会で戦争関連法(安保関連法)が強行採決されたとき、キャスターが「反対運動も強いようですが、なぜ採決を急ぐのか」という趣旨の問題提起をすると、政治部記者が「アメリカ議会で安倍総理は夏までに安保法案を成立させると公約しているためです」と解説するありさまだった。

 外国の議会で国内法成立を公約するなど属国そのものといえる行為で前代未聞だが、こうした政府・与党の見解を政治部記者は疑問視せずに発信するだけだ。参議院で戦争法が強行採決される直前の9月11日、またしても政治部記者が「意を尽くした説明によって、反対する国民に配慮している」といったコメントまでしている。これについて前出の小滝氏は、次のように指摘する。

「野党議員の質問をはぐらかし、同じ言葉を繰り返すだけの安倍首相の答弁を支持しているのです。また、国会質問では与党3人、野党2人の登場が定着していますが、ニュースでは、必ず安倍首相の長々とした答弁を放送し続けていました。量的には与党70%、野党30%の比率で放送しています。どのような質問で安倍首相がしどろもどろになったか、何が問題なのかは、まったくといっていいほど伝えていません」

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放送総局長と政治部を名指し批判

 そのほかにも、政権に不都合な情報を隠し、有利な情報を報道している例は枚挙にいとまがなく、NHK政治部が安倍政権支援の実働部隊になっているとの指摘は多い。

 こうした事実をとらえ、NHKや籾井勝人会長だけでなく、具体的な批判も上がり始めている。今回の包囲行動を指揮した「NHK包囲行動実行委員会」とは別に、30代女性の呼びかけがきっかけで発足した「マスコミに公正な報道を求める市民の会」(8月6日付当サイト記事『NHK、驚愕の「安倍政権ベッタリ」偏向報道が発覚!ついに国民が抗議の包囲網!』参照)は、今回の行動に先立つ10月13日に「安保報道しなかったNHK大包囲」という抗議活動を実施している。

 このとき集まった人々は、良識あるNHK職員の奮起を促すとともに、板野裕爾放送総局長と政治部にターゲットを絞り、籾井会長とともに辞任するよう求めた。責任部署と責任者を明確にした点がポイントだ。

 もうひとつ、参加者から上がる声で見逃せなかったのは、受信料支払いを義務化してマイナンバー(社会保障・税番号)カードで徴収することへの反対だ。これは、自民党から受信料を義務化せよとの声が上がり、籾井会長がマイナンバーを活用した徴収を検討することを表明したからだ。

 報道弾圧する政府・自民党に反省はなく、圧力を受けるNHKは抵抗どころか積極的に政権を支えている状況下で、抗議に参加した人々は、「NHKをアベチャンネルにするな!」「マイナンバーで受信料を徴収するな!」「籾井会長は辞めろ!」と気勢を上げた。

 果たしてNHKは、“アベチャンネル”から脱却できるのだろうか。
(文=林克明/ジャーナリスト)

林克明/ジャーナリスト

林克明/ジャーナリスト

1960年長野市生まれ。業界誌記者を経て週刊現代記者。1995年1月からモスクワに移りチェチェン戦争を取材、96年12月帰国。第一作『カフカスの小さな国』で小学館ノンフィクション賞優秀賞受賞。『ジャーナリストの誕生』で週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。

 最新刊『ロシア・チェチェン戦争の628日~ウクライナ侵攻の原点を探る』(清談社Publico)、『増補版 プーチン政権の闇~チェチェンからウクライナへ』(高文研)
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