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吉田潮「だからテレビはやめられない」(4月24日)

小泉今日子、『最後から二番目の恋』で体現する“進化したオバサン”と、不自然な加齢

文=吉田潮
小泉今日子、『最後から二番目の恋』で体現する“進化したオバサン”と、不自然な加齢の画像1『続・最後から二番目の恋』公式サイト(「フジテレビ HP」より)

 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 オバサンになるまでには「潜伏期」→「無自覚期」→「悪あがき期」→「諦観期」がある。潜伏期や無自覚期は「まさか自分が客観的にオバサンと思われているとは微塵も思ってもいない」ゆえに、「女子」として振る舞う。悪あがき期には「このままではマズイ」とある程度の危機感を持ち、もがいたり無駄に自分を磨いたりしてみる。諦観期は文字通り、開き直ってあきらめの境地に至る。実はこの先には「オッサン化」が待ち受けている。本音は女子扱いされたいのに、飛び級してオッサン化するのも、それはそれで痛々しいとされる。

 前置きが長くなったが、このオバサンの変遷をうまく体得しているのが、キョンキョンこと小泉今日子である。今クール(4~6月期)の連続テレビドラマ『続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)で、48歳の独身テレビウーマンを演じているのだが、このドラマの第一弾はかなりキビシイものがあった。無自覚期の勝ち組女性独特の痛々しさ全開で、「え、テレビ局のプロデューサーってこんなんでいいの?」と目を疑ったものだ。キョンキョンの「自然体を装った年齢の重ね方」に違和感を覚えた人も多かったはず(いや、現実にいたら驚くほど可愛くて魅力的だし、その分余計に厄介だろうなと思うけど)。

 個人的にはキョンキョンがあまりに外連味(けれんみ)たっぷりだったので、中井貴一の公務員っぷりに集中せざるをえなかった。髪型といい、発言といい、立ち居振る舞いといい、「一般人が考えるステレオタイプなTHE・地方公務員」。邪魔にならない存在感って実は難しい。

 が、今期の続編は、キョンキョンが明らかに諦観期に入っていた。相変わらずかわいこぶって妙にケンカをふっかけるシーンも多いのだが、しぐさや表情、発声に異変が起きていた。より一層老けたというか、何か「抜けた」感がある。中井貴一の枯れ感を上回る抜け感。滔々と持論を展開する姿は、第一弾でもイヤというほどあったのだが、そのしぐさひとつひとつにうまいこと「加齢」を被せてきたなぁと思った。もしかしたらキョンキョン自身も気づいていないかもしれない。結婚式場のありえない(使えない)引き出物に文句と呪詛を垂れ流すキョンキョンは、見事に立派に進化したオバサンであった。

ドラマ自体は差別化に成功?

 出世というテイだが、事実上は閑職に押し込められた48歳のキョンキョンが、どんどん年齢と社会性を自覚していく様が今後きちんと描かれることを願う。願うのだが、不穏な要素もある。この後、12歳年下の元カレ・加瀬亮が登場してくるのだ。キョンキョンがまたぞろ悪あがき期に逆戻りするという恐れがある。ま、それが恋愛モノのセオリーってことなのだろうけれど。女の滑稽の「裏側」まで到達できるかどうかが不安でもある。

 常に勝気で強気で喧嘩っ早くて、元ヤンキー色や姉御肌色を求められるキョンキョンだが、どこかで「男社会に黙って迎合する成熟」も見せてほしい。だってそれが現実だから。

 恋愛にほぼ興味のない若い世代を完全に無視し、どことなく古臭いイメージを全体にまとっているところが、このドラマの売りでもある。全体的に懐かしいニオイを漂わせているのは、ターゲットを40~50代に絞っているからか。新しさよりも懐かしさ、奇抜よりも懐古。それはそれで「差別化」として成功しているし、今クールのドラマの「重い・クール・荘厳」な警察・刑事モノ乱立の中では、確実に別次元として抜きんでている。世の中全体の関心が薄い「恋愛」モノを毎クール懲りずに捻り出すフジテレビの姿勢には、今後も着目していきたい。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

吉田潮

吉田潮

ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」を連載中。東京新聞でコラム「風向計」執筆。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)などがある。

Twitter:@yoshidaushio

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