『フィリピンで日本人60人逮捕、不法就労の疑い 電話対応代行業「半年間の実務研修中だった」と主張』(9月12日付産経新聞)
報道内容は、フィリピンの日本人ビジネス関係者の間で驚きを持って迎えられた。なぜなら、この「不法就労」とされた行為は、現地で日本人向けの格安語学学校を営む各社にとって、フィリピン当局から許されてきたことという認識だったからだ。
摘発されたのはJapan Intertrade Callcenter Corporation(JICC)、日本ではオンライン英会話学校「イーフレンド」、セブ島にある英語学校「NILS」の運営を行う一方、現地の日本人社会にそれなりに顔の利く頼れるボスとして幹部が活躍していたから穏やかではない。さらには、このJICCで働いていた元社員や、語学学校の運営ノウハウのあるスタッフが韓国人系やオーストラリア人系の資本の学校にも転職し、アジアの非英語圏各国生徒をあてにした「格安語学学校といえばフィリピン」という高付加価値な観光産業をつくり上げていた。
今回のJICC摘発の容疑はシンプルで、そこそこ良質な語学授業とその割に格安の授業料を売りにする同社運営の英語学校において、本来ならばやや危険もある現地での寮生活で安全な衣食住を提供する代わりに、一日約4時間(摘発容疑においては10時間働く日本人もいたとされる)の労働をインターンに行わせていたことが、不法就労と取られたのだ。
しかも、フィリピン労働省(DOLE)は、この問題を一業者による軽はずみな犯罪ととらえず、駐フィリピン日本大使館に対して「同様の入国が日本企業によって行われるのであれば、DOLEとして他の業者や日本人留学生も“何度でも”拘束する」と通達したのだ。日本大使館職員は、このフィリピン外務省経由のDOLEの圧力の存在を一度は否定したが、さらにインターンと称して外国人労働許可証(AEP)を持たない日本人留学生3名が不法就労であるとして拘束された後、事実関係を一部認めた。それだけフィリピン社会が、日本企業や韓国企業などのこうした不法就労スキームに対して厳しい目を向けていることになる。