しばらくして、この人物について良からぬ噂がもたらされるようになった。いくつも現地企業やアジア各国企業に出資したといい羽振りの良いように振舞う彼だが、過去に日本で広告などビジネス上のトラブルに見舞われた問題ある人物だというのだ。実際、彼の出資した英語学校は前触れもなく突然身売りも同然となり、彼自身、ほとんど姿を現さなくなってしまった。一見愛想の良い彼が、日本でどのような問題取引をしていたのかを知った人々は、その落差に驚きを隠さなかったという。
また、LINEや楽天といった日本の著名とされる上場企業から留学生を受け入れるビジネスパーソン向けの語学学校を経営する企業の経営者は、巨額脱税などで問題となった企業グループの役員を務め、この地でもいわくつきの人物として有名である。見た目だけは人当たりの良い彼と親しい人物によれば、彼自身はそういう問題のある反社会的な取引が嫌でフィリピンで再起を願い逃げ出したと説明する割に、政治家や元ICT実業家など日本での派手な交友関係をSNS上で公開している。また、周辺では女性問題などのトラブルも後を絶たない。この語学学校に生徒を送ってくる大手ICT企業は、彼と密やかな交遊関係で親密であるため、個人的な情実で会社の経営を支えてもらっていると元社員は言う。
こうしたフィリピンのビジネス界隈の日本人ビジネスパーソンに特徴的なのは、日本での名前を名乗らず、便宜的に過去が探れないようなビジネスネームでお互いを呼び合う文化ができていることだ。たとえば、あるトリップコーディネーターは、現在は日本の旅行サイトなどのキュレーターとして日本人のライターを雇い、複数のアカウントを持っていて高額のアフィリエイトを得ていると自称している。実際、彼の営業で旅行に来た日本人もそれなりにいる。しかし、今年初め、彼は不正滞在で摘発され、日本に送還された後、実は彼が日本の上場企業の不正売買(ハコ乗りというそうだ)で書類送検され起訴有罪となった経歴の持ち主であったことが判明した。
フィリピン人の日本人観
フィリピンで日本人が生きていく環境は厳しい。というのも、フィリピン人にとっても、観光や不動産以外で豊かな暮らしをすることはなかなかできないのだ。よそ者であり、現地で暮らしていく術のない日本人が頼る先は、結局はインターネット越しの日本市場、日本人相手のビジネスだけだ。必然的に、フィリピンで安く仕入れられ、日本で高く売れるのは英語力だということで、韓国人同様に日本人も語学学校や旅行コーディネーターを目指す人たちはフィリピンにたくさんやってくる。