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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

不動産市場、「危険な事態」が密かに進行…大手不動産、負債が異常膨張で霞む「出口」

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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 つまり、REITによる資産の取得や運用にはスポンサー会社からの意向が働きやすい環境にあるということができる。

 この恩恵に浴しているのが、大手不動産会社である。つまり、自らが取得し、開発した不動産の最終出口に常にREITという「心強い出口」を控えさせているのである。以前であれば、不動産会社は自らが原材料である土地等を取得し、自らのリスクで建設した建物で運用し、最終的に売却して利益を計上する場合には、外部の流通市場で行わなければならなかった。

 ところが、「傘下の」REITがあれば、常に有力な「買い手」として、自らが投資した不動産を受け取ってもらえるのである。これほど心強い味方はいないということになる。

 REITを支えるのが、運用難に悩む地域金融機関や個人投資家である。上場REITの投資口は東京証券取引所に上場され、日々流通している。利回りも平均分配利回りで3.5%ほど。さらに加えて日銀が相場を支えているとなれば「安定した運用先」としてREITが選択されるわけである。

 こうしたビジネスモデルの確立は、大手不動産会社にとっては、安心して金融機関から資金を借り受け、不動産に投資し、出口はREITにしっかり受け取ってもらうなかで、大きな収益が期待できる「打ち出の小槌」になった。

警戒すべき兆候

 しかし、ビジネスモデルに永遠はない。昨年後半以降いくつか警戒すべき兆候がでてきているのだ。

 ひとつめには、常に安定した「出口」が存在した分譲マンションマーケットである。低金利と所得税減免などのあらゆる優遇策を織り込んだ分譲マンション事業に黄色信号がともり始めたのである。あまり取り上げられていないが、首都圏におけるマンション供給量は昨年4万戸ぎりぎりの水準まで落ち込んだ。この数値は、リーマンショック直後の3万6000戸に匹敵する低水準であった。

 供給量の減少は、主に建設費の上昇による販売価格の上昇によるものであり、契約率は好調水準である70%を維持したことから、それほど大きな話題とはならなかった。

 ところが、今年になって供給量は回復するどころか、さらに落ち込み、不動産経済研究所によれば、1~6月累計で1万4454戸、供給の少なかった昨年上半期を19.8%も下回る衝撃的な数値となった。

 これに追い打ちをかけそうなのが消費増税の延期である。販売価格の7割から8割が建物代であるマンションにとって消費増税の影響は大きい。前回の増税時には「駆け込み需要」が発生し、モデルルームに行列ができるなどの珍現象が生じた。今年はその駆け込み需要すら見込めなくなってしまった。

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11:30更新
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