
18日、米国の玩具小売り大手トイザラスが、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。
米国の小売り企業全体が、アマゾンをはじめとするネット企業の脅威にさらされている。その脅威は、従来のビジネスモデルを基礎とした経営の強化だけでは、成長が実現できないほどに厳しい。今後もこのトレンドは続くだろう。アマゾンを筆頭とするネット関連企業の急成長を受け、消費者の行動が大きく変化している。世界中でネット関連企業のビジネスによって、競争が激化している。トイザラスの苦境はわが国の企業にとって、対岸の火事ではない。
激動の時代を迎える小売り業界
世界中で小売り業界が激動の時代に突入している。背景には、オンラインショッピングサービスを展開するアマゾンなどの存在感が大きくなり、店頭でモノを買うことが少なくなってきたことがある。中国のアリババドットコムは、自ら店舗を運営してきた。そこには、スーパーマーケットだけでなく、オンラインショッピング、購入した食材を調理してもらうサービスなども含まれる。アリババは従来のビジネスモデルと大きく異なるコンセプトを実現したのである。
言い換えれば、オンライン(インターネット上での消費行動)と、オフライン(実店舗)の融合が急速に進んでいる。小売り革命というよりも、物流革命と呼ぶにふさわしい動きだ。アマゾン、アリババだけでなく、オンライン上でのフリーマーケット出店サービスを提供するわが国のメルカリなど、スタートアップ企業の存在感も日増しに大きくなっている。
トイザラスはこうした動きに対応することができなかった。そのため、顧客をつなぎとめることができず収益性が悪化した。アマゾンに対抗するためオンラインショッピングにも進出したが、投資負担が業績を圧迫し、同社は4期連続の最終赤字に陥っている。
トイザラスの経営悪化には、スマートフォン(スマホ)などの普及によって子供の遊び方が変化してきたことも影響している。たとえば、児童がスマホでゲームアプリをダウンロードし、友人同士で遊ぶケースは日常化している。ハード(玩具などのモノ)ではなく、ソフト(ゲームや動画などのコンテンツ)が重視されるようになってきたのである。
このように考えると、消費を行い一定の効用(満足感)を得るという心理は、技術の革新とともに大きく変化してきたことがわかる。モノをつくっている、あるいはモノを販売してきた企業が、これまでと同じことをやり続けることによって成長を達成することは、一段と難しくなっていくのではないか。