
前回の記事で、アマチュアスポーツ界における組織上層部によるパワハラ問題や、独裁的な経営がされている組織などにおける不祥事など一連の騒動は、氷山の一角にすぎず、日本社会全体に“組織の金属疲労”が起きているのではないかと指摘しました。そして、そうした日本の組織で起きている事象は欧米のトップスクールで教えられているネットワーク分析の理論(以下、ネットワーク理論)とプラットフォーム戦略®を学ぶことでより深く理解できると指摘しました。
ここまでS・グラノヴェッターの「弱い紐帯の強さ(“The strength of weak ties”)」、シカゴ大学ビジネススクール教授のロナルド・S・バートの「構造的空隙の理論」「ネットワーク密度」「構造同値」等についてご紹介してきました。
今回ご紹介するネットワーク理論は、「ランダムネットワーク」と「スケールフリーネットワーク」です。『世界のトップスクールだけで教えられている 最強の人脈術』(KADOKAWA)からその内容をご紹介します。
ランダムネットワークとは、分布のピークが真ん中付近にあり、左右対称に長い裾を引くような正規分布のネットワークのことを指します。
人間の身長などが例として挙げられます。大人のうち大多数の人の身長は150~180センチメートルくらいの範囲にあり、身長が10センチメートルあるいは3メートルというような人はまずいません。そして、このランダムネットワークの分布のかたちは、山のかたちになります。
スケールフリーネットワークの特徴

これに対してスケールフリーネットワークとは、一部のノードが多数のつながりを持つ一方で、ほとんどのノードは少数のノードとしかつながっていないような構造のことを意味します。つまり、スケール(尺度・分布)からフリー(自由)という意味です。
ネットワーク理論においては「点」とこれらを結ぶ「線」からできる図形のことを、「グラフ」と呼びますが、このとき「点」のことを頂点(ノード)、ノードとノードとを結ぶ線のことを辺(エッジ)と呼びます。
スケールフリーネットワークの例としてよく挙げられるのは、World Wide Web(ワールド・ワイド・ウェブ=WWW)です。WWWとは、インターネット上で提供されるハイパーテキストシステムのことで、ウェブページをノードとし、ノード同士はハイパーリンクでリンクされるネットワークです。そこではごく少数のサイトが多数のリンク数を集めるのに対し、大多数のサイトは小さなリンク数にすぎないことがわかっています。