以前、当連載の記事『「写ルンです」やアナログレコード、なぜ根強く地味にブーム?古さ&手間こそ贅沢』で、「写ルンです」やアナログレコードといった、過去のカルチャーが若者たちの間で密かなブームになっていたことを紹介した。
こういったリバイバルは“物”だけでなく“食”にも飛び火したようで、最近では、コッペパンの専門店が全国各地に登場。新たなムーブメントとして注目を集めている。だが、なぜ今になってコッペパンが人気になっているのだろうか。「写ルンです」やアナログレコード再燃の時とはまた違った背景があるのだろうか。立教大学経営学部教授でマーケティングが専門の有馬賢治氏に話を聞いた。
2つの層から需要が生まれる理由は?
「『写ルンです』やアナログレコードが再燃した背景には、レトロな味わいや手間をかけることで得られる満足感に新鮮さを覚える若者が多かったことがありました。一方、今話題になっているコッペパンには、これを懐かしむ中高年世代と、逆に新鮮さを感じ取っている若者世代という2つの購買層が支持しているという特徴を見て取ることができます」(有馬氏)
コッペパンといえば、かつて給食には欠かせない食材でありながら、近年は献立の多様化から登場回数が減少している。若者にとってはそこまでお馴染みでないからこそ、シンプルながらつい手を伸ばしたくなる食品として人気を集めているという見方もできる。
「本来、マーケティングではSTP、つまり
・セグメンテーション(顧客ニーズのグループ化)
・ターゲティング(グループ化した市場の選定)
・ポジショニング(競争優位となる自社ポジションの確立)
を分析してなるべくターゲットを限定して販売するのが一般的ですが、コッペパンの場合は“買う”という行為は同じながら、2つの購買層でそれぞれ買う動機が異なっている点に特徴があります。売る側は決して狙っているわけではないのですが、こういう売れ方も最近は少なくないですね」(同)
ちなみに有馬氏によると、盆踊りを進化させた“盆ダンス”が各地でイベント化されて、高年齢層と若者層が一緒に楽しむ文化として成立しており、これも2つの層から受け入れられた例だという。