日本たばこ産業(以下、JT)は11月9日、同社が販売する加熱式タバコ「プルーム・テック」を使用することによる、体内に取り込まれる健康懸念物質の体内曝露量に関する調査結果を発表した。16種の成分に関して調査したところ、紙巻きタバコ使用時に比べると、プルーム・テック使用により多くの成分の体内曝露量が大幅に低減できると同時に、禁煙した場合と同等の水準まで低減できたとした。
研究は、北里大学医学部附属臨床研究センター教授である熊谷雄治氏の協力のもとで実施された。JTは、喫煙に伴う健康へのリスクを低減させる可能性のある製品を「リスク低減製品」と定義。プルーム・テックを「リスク低減の可能性のある製品であり、タバコ業界のイノベーション」と語るJTの福地淳一執行役員渉外企画室長に話を聞いた。
健康懸念物質を紙巻きタバコより99%低減
――プルーム・テックは紙巻きタバコと比較して、ニコチンやタールのような健康懸念物質を低減できるとの調査を発表されました。この調査結果を踏まえ、紙巻きたばこや他社製品との比較についてお聞かせください。
福地淳一氏(以下、福地) まずニコチンは過剰に摂取した場合には、頭痛や吐気を引き起こすことがありますが、通常の紙巻きタバコでの喫煙量であれば影響が少なく、慢性的な健康影響を考えた場合、基本的にタールのほうに問題があります。紙巻きタバコは燃焼に伴ってタールが発生しますが、プルーム・テックは燃焼による煙は発生しないので、タールが排出されません。過去に行った調査でも、プルーム・テックからWHO(世界保健機関)が懸念する9つの物質がほとんど検出されなかったのは、燃焼による煙が発生しないことに起因すると思います。紙巻きタバコと比較して、これら健康懸念物質を99%低減できた意味は大きいです。
他社製品については、事実のみ申し上げます。JTの製品は低温加熱式タバコで、タバコカプセル内の温度は摂氏30度ほどですが、他社の加熱式タバコは加熱温度が200~350度と理解しています。低温のほうが健康懸念物質を排出する量も少ないと考えられます。他社は「健康懸念物質を90%削減」と発表していますが、弊社の「99%低減」との違いは、その温度差に起因しているのではないでしょうか。
――他社製品は「焼き芋」のようなにおいがするとの声があります。プルーム・テックのにおいは、いかがでしょうか。
福地 においについては、社外の調査機関に調査を依頼しました。その結果、においのレベル感は、紙巻きタバコを100%とした場合、臭気濃度は1%未満です。これも「低温加熱方式」により、においを大幅に低減することが可能になりました。
――ニコチンに基づく依存症については、どのようにお考えでしょうか。
福地 ニコチンには依存性があると認識しております。プルーム・テックもニコチンを含んでおりますので、弱いながらも依存性を伴うと認識してください。
――プルーム・テックにおける受動喫煙、三次喫煙の影響についてはどうでしょうか。
福地 プルーム・テックはタバコを燃やさないことから、燃焼による煙は発生しないため、室内環境に影響を及ぼしません。よって、環境基準の考え方に基づき、周囲の方々への健康に対して影響を及ぼすことはないと考えています。したがって、受動喫煙や三次喫煙のリスクについて紙巻きタバコと同様に議論するべきではないと考えます。
――プルーム・テックは化学物質に過敏な方の近くでも吸えるのでしょうか。
福地 いえ、そういう方の前では吸わないことが大前提であり、タバコを吸わない方の近くでは、喫煙はよく状況を見て相当な配慮をしなければなりません。ましてや、お子さんがいる場所では吸うことはやめるべきです。法律的に喫煙可能なこととマナーは別問題で、愛煙家は喫煙可能な場所であっても、お子さんがいれば配慮しなければならない面もあります。
――プルーム・テックを吸うメリットはありますか。
福地 プルーム・テックもタバコ製品であり、大人の嗜好品と位置付けています。昔から、JTではタバコについて「句読点」と考えています。仕事が一区切りしたとき、終わったとき、次もがんばろうというときに、一服を吸う嗜好品にふさわしく、生活の中の句読点の意味合いがあります。世の中には、その句読点の役割を果たすタバコを愛好する愛煙家も多くいます。
喫煙ネタで恐縮ですが、多くの会社では社長と一般社員が気軽に話し合える場所は喫煙所という話をよく聞きます。タバコを介してのつきあいも、ビジネスの場にはあると思います。
加熱式タバコに対する正しい理解を広めたい
――その一方でタバコに対する批判もあり、理解を深めていく必要がありますね。
福地 タバコの問題は主に健康リスクに関わるもので、タバコを吸われる方の能動喫煙、そして周囲の方の受動喫煙の2面があります。能動喫煙は、タバコのリスクと良さを判断した上で、成人自らが判断して喫煙するかどうかを決めていただくものと考えています。一方、今の世の中のタバコに対する批判は、主に受動喫煙問題だと理解しています。タバコを吸われない方の迷惑にならないことが、今後ともタバコが認知されていく上で必要なことです。
JTは、これまでもタバコを吸う方と吸わない方が共存できるように分煙社会を提案し、マナーについても、ぽい捨てや歩きタバコをやめましょうと呼びかけてきました。タバコへの理解を深めてもらうため、社会との対話が必要です。
――紙巻きタバコからプルーム・テックに愛煙家は移行できるでしょうか。
福地 プルーム・テックを評価されて専門に喫煙する方もいれば、「物足りない」との声もあります。タバコはお客様のそれぞれの好みがありますから、愛煙家全員にプルーム・テックの味が合うかはまだまだです。さまざまな方々に、「このタバコならいいよね」と言っていただけるプルーム・テックを開発していきます。
――確かに、味の濃い紙巻きタバコを愛好している人からは、プルーム・テックは物足りないといった声があります。
福地 プルーム・テックは、タール1ミリの紙巻きタバコを愛好されている愛煙家からは評価が高いです。JTでは「吸いごたえ」と呼んでいますが、その「吸いごたえ」を増やす「プルーム・テック・プラス」、高温加熱式でタバコらしさを追求する「プルーム・エス」も来年以降、展開していきます。
――一般社団法人日本禁煙学会が「加熱電子式タバコは、普通のタバコと同様に危険であり、受動喫煙で危害を与えることも同様である」との警告を出しています。
福地 日本禁煙学会などが警告を出しているのは承知しています。個別の事案に関するコメントは控えますが、大事なことは、科学的な調査結果に基づき、客観的・中立的な評価がなされることです。私どもは、第三者の研究者の協力も得て、科学的な妥当性を担保しつつ、プルーム・テックの試験や研究を行うよう努めています。エビデンスに基づいた議論ができることで、より健全な社会になっていきます。
――プルーム・テックをはじめとする加熱式タバコの理解を深める活動やPRは行っていかれますか。
福地 加熱式タバコはタバコのさまざまな問題を解決できる大きなソリューションであり、個人的にはタバコ業界のイノベーションと受け止めています。健康リスクの問題についても、加熱式タバコは喫煙に伴う健康へのリスクを低減させる可能性があると考えています。家の火災においては、「タバコ」の割合が多いとの報告もありますから、火災の減少にもなります。また、環境的には、ぽい捨て減少にも応えられます。喫煙者のみならず、社会やJTにとっても、加熱式タバコはさまざまな課題解決につながります。
――プルーム・テックを開発された想いを聞かせてください。
福地 私は以前、研究開発に携わっていましたが、その頃、小学校高学年の娘に「くさくないタバコをつくって」と言われました。プルーム・テックは、においやタバコにまつわる社会課題を解決できると期待しています。私は以前、家の外でタバコを吸っていましたが、プルーム・テック以降、妻も娘も「これなら家で吸ってもいい」と許可してくれました。
プルーム・テックについて、一歩一歩社会からのコンセンサスを得て、「このタバコなら吸ってもいいです」と各所で言われるようになりたいです。
――加熱式タバコに関して、社会に認知してもらうために同業他社と連携することはありますか。
福地 タバコ会社によっては、さまざまな科学分析、研究の方法と発表の仕方があるので、測定方法等については統一していくことが必要だと考えます。他社と競合すべきところは競合しても、世の中への発信等については共通化や統一化をはかり、ともに社会とコミュニケーションを深めていくことについて連携していくべきです。
――ちなみに、JTの中での喫煙率はどのくらいでしょうか。
福地 調査していませんが、一般より高めという印象です。しかし、喫煙については各人の自由意思に委ねており、喫煙するかどうかは個々人の判断です。今、日本の喫煙率をざっくり言いますと男性3割、女性1割で平均2割です。今のJTは女性採用率が高いため、それに応じて喫煙率も低くなる傾向にあるようです。
――ありがとうございました。
(構成=長井雄一朗/ライター)