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杉江弘「機長の目」

ボーイングやエアバスの最新ハイテク航空機、悲惨な墜落事故が多発している理由

文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長
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ボーイングやエアバスの最新ハイテク航空機、悲惨な墜落事故が多発している理由の画像1ボーイング737MAX(「Wikipedia」より/Ariadacapo)

 またしてもパイロットがコンピューターによる操縦系統の暴走を止められず、航空機が真っ逆さまに墜落する大事故が起きた。

 2018年10月29日、インドネシアのジャカルタを飛び立ったライオン航空の最新鋭のハイテク機が、直後に乗客乗員189人全員を道連れに海面へ激突、木っ端みじんに大破した事故。ブラックボックスから、原因は計器のトラブルが機体の異常な機首下げを引き起こしたことに端を発したことが明らかになりつつある。

 離陸直後に急に機首が下がるという想定外の動きに対して、パイロットは必死に操縦桿を引いて高度を保とうとして格闘を繰り返したものの力尽きて、最後にはほぼ垂直に海に突っ込んだ。この悲惨な事故は、改めて現代のハイテク機に潜む恐ろしい“落とし穴”を知る結果となった。

ライオン航空は日本人も多く利用する最大手の会社

 事故を起こしたライオンエア610便は、ジャカルタから北に位置する島に向かう国内線であって、たまたま日本人が搭乗していなかったことから日本のメディアでは大きく取り扱われていないが、同航空は東南アジアでは最大手のLCCで、インドネシアの国内30都市とアジアの多くの都市に就航し、製造が新しい機材を111機(2016年時点)保有し、さらにボーイング機を190機発注している急成長の航空会社である。そのため、普段多くの日本人も利用するので、今回の事故は他人事ではない重大事故である。

 しかも、事故を起こした機体は、ボーイング737を改良した737MAXという、導入されたばかりの最新鋭のハイテク機であった。現在、ライオン航空とボーイングは事故原因をめぐり激しく争っている。

 ボーイングがパイロットに責任を転嫁することに対し、ライオン航空側はパイロットが新しく導入されていたシステムを理解できるような周知がなされていなかったと反発。創業者のルスディ・キラナ氏は、「裏切られた」として発注済みの190機(約2兆4800億円)の契約をキャンセルしようという事態にまで発展している。

 では、パイロットが操縦系統の暴走を止められず墜落した事故とは、いったいどのようなものであったのか、まとめてみたい。

杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

1946年、愛知県生まれ。1969年、慶應義塾大学法学部卒業。同年、日本航空に入社。DC-8、B747、エンブラエルE170などに乗務する。首相フライトなど政府要請による特別便の経験も多い。B747の飛行時間では世界一の1万4051(機長として1万2007)時間を記録し、2011年10月の退役までの総飛行時間(全ての機種)は2万1000時間を超える。安全推進部調査役時代には同社の重要な安全運航のポリシーの立案、推進に従事した。現在は航空問題(最近ではLCCの安全性)について解説、啓発活動を行っている。また海外での生活体験を基に日本と外国の文化の違いを解説し、日本と日本人の将来のあるべき姿などにも一石を投じている。日本エッセイスト・クラブ会員。著書多数。近著に『航空運賃の歴史と現況』(戎光祥出版)がある。
Hiroshi Sugie Official Site

Twitter:@CaptainSugie

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