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片山修「ずだぶくろ経営論」

マツダ、世界がひれ伏すデザイン美を支える、世界最強の「金型製作部」

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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マツダ、世界がひれ伏すデザイン美を支える、世界最強の「金型製作部」の画像1マツダ技術本部ツーリング製作部部長の橋本昭氏

「魂動磨き」の誕生

 マツダ本社工場の一角には、機械加工がすんだ金型が並べられている。これを造形を崩さないように、金型職人たちが一つひとつ手で磨き、1ミクロンレベルの「面粗度」に仕上げていく。

「表面はあたかもピカピカに見えるけれども、機械加工目であるカスプを落とさなければいけない。大手の自動車メーカーさんは、それを機械でやろうとする。だけど、われわれは面粗度は人の手でやる。デザインさん、モデラーさんの思いは、機械ではつくれない。人の手ならではの味わいが金型に注ぎ込まれる。機械でミクロンのカスプを落とそうとすると何十時間もかかってしまうし、デザインのこだわりの想いは再現できない。だから、磨きの現場は『魂動デザイン』を必死で理解し、その極意を頭に叩き込んでいる」

 人の手の重要性について、こう熱弁をふるう金型部門の橋本昭の作業着の腕の部分には、なんと「魂動」の2文字が縫い取られているではないか。複雑なかたちをしている金型の磨き作業は根気がいる。作業者の技能に依存する部分が大きい。しかも、単に磨けばいいというわけではない。やみくもに磨けば、形状が痩せてしまう。

「最初、われわれはカスプを落としきって、きれいになったということで、『できた、できた』と大威張りしとった。でも、そうじゃなかった。欲しいデータが全部、崩れとった。“これでは、いかん”と反省した」

 最終磨き作業で製品形状面を丁寧に仕上げ、金型の組み立て作業に入る。こちらも難題だ。単に部品を組み合わせただけでは使いものにならない。誤差のまったくない加工は不可能だからだ。小さな誤差が重なれば大きな誤差となり、金型の合わせ面に隙間が生じてしまう。だから、加工された各部品を削りながら、微妙な調整を図っていく。

 しかも、「魂動デザイン」は車体に曲面を多用している。加えてキャラクターラインを使わずに、光と影のリフレクションでエモーショナルな動きを表現するために、金型の合わせ作業には“神業”が要求される。

「これがもう至難の業でね。面と面が全部一体になるようにつくっていかなきゃいけない。だから、金型の合わせ作業では、上下の金型の面のクリアランスをミクロン単位で均一化することがもっとも重要です。手間はかかるけど、それを欠かしたら絶対に『魂動デザイン』はできません」

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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