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NHK、スマホ・PC保有者も受信料義務化を検討…テレビ非保有者も年額約1万5千円

文=明石昇二郎/ルポライター
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「公共放送」の看板を下ろし「国営メディア」に近づくNHK

 NHKの答申はいう。

「放送の常時同時配信は、NHKが放送の世界で果たしている公共性を、インターネットを通じても発揮するためのサービスと考えられ、インフラの整備や国民的な合意形成の環境が整うことを前提に、受信料型を目指すことに一定の合理性があると考えられる」(「答申」要旨より)

 本当だろうか。日本語として大変わかりづらい言い回しであり、つまり不親切なことこの上ない文章だが、答申のこの部分がNHK「ネット受信料」導入の根拠とされているので、付き合わざるを得ない。お許しいただきたい。

 キーワードは2つ。「公共性」と「国民的な合意」だ。NHKが、テレビで放送する番組をインターネットにも同時に流すことに「公共性」があるのなら、国民が合意した場合に限り、「ネット受信料」制度の導入は道理にかなうと言っている。しかし、国民の合意を得られる保証は今のところまったくない。

 答申の肝は「公共性」のほうだ。そもそも、ネットの世界における「公共性」とはどんなものなのか。その定義がきちんと定まらないことには、合意もへったくれもない。NHKの番組をネットに流しさえすれば、直ちに公共性が発生するというものでもない。それに、公共性があれば情報を一方的に流すことでカネを取ってもいいという決まりもない。

 公共性のある情報をネットで発信しているのは、行政機関をはじめ、すでにさまざまなところがある。ただし、それはどれも無料だ。

 希少な電波を割り振って使う「放送」と、特別な認可を必要としない自由な「ネット通信」とでは、その成り立ちからしてまったく異なる。ネット後発組のNHKだけが特別扱いされなければならない道理はない。「NHKのネット番組」には公共性がないと国民に判断されれば、ネット受信料構想はたちまち水泡に帰す。

        ※

 そんな面倒な議論を棚上げにしたまま答申では、パソコンやスマートフォン、タブレット等のインターネット接続端末を持っている者すべてに費用負担、すなわち受信料を求める案も検討されている。NHKは「答申」資料の中で、「単にパソコン・スマートフォン等のネット接続機器を持っているだけで負担をお願いする、ということは考えていない」としているが、ワンセグ放送導入時、同放送のみを受信する人もNHK受信契約が必要になるとの報道をまったく見かけなかった上に、NHK自身も積極的に周知はしなかったことを考えると、「今は考えていない」くらいに聞いておいたほうが無難である。

 気になる「常時同時配信」の受信料額だが、答申では、「なるべく放送のそれとの差をつけないことが望ましい」としており、現在は月額1310円、年額1万4545円(ともに振込用紙での支払い額)の「地上契約」と同程度になるらしい。

 その上で、受信料を払わずに視聴する「フリーライド」は断固として阻止する構えのようだ。答申中にも、「フリーライド(費用を負担せずに視聴すること)を抑止する」との文言が登場する。

 しかし、放送法を改正し、放送とネットの両刀使いであまねく日本中から受信料を取ることが可能になった暁には、それはもはや「受信料」ではなく、事実上の税金となる。となれば、NHKは「公共放送」と名乗ることはできなくなり、放送にネットが合流した「国営メディア」と化す。

 無料、あるいはNHKオンデマンドのような随意契約(NHKが言うところの「有料対価型」)の形で当初はスタートさせ、追って受信契約を義務付ける仕組みへと移行させることも検討されている。

 その“こけら落とし”イベントとして想定されているのが、2020年の7月から8月にかけて開催される予定の東京オリンピック・パラリンピックだ。NHKでは、「常時同時配信」は遅くとも今年中にはスタートさせておく必要があると考えており、閣議決定された放送法改正案も、今国会での成立を目指している。今や政府とNHKは一心同体である。

それでも「テレビ離れ」は止まらない

 反対の声がないわけではない。当の「答申」がアップされているNHKのウェブサイトでは、民放各社や国民からの反対意見が一緒に公開されていた。

 青森放送。

「費用負担のあり方について、『受信料型を目指すことに一定の合理性あり』、としながらも『制度検討に時間がかかることが予想される』と、検討作業がまだ不十分な段階であることを自ら認めていると解釈できます。(中略)一定の期間を設定して利用者に費用負担を求めない運用も検討しうるという想定については、受信料の公平負担という基本的な考え方からは逸脱をし、受信契約者から見ると著しい不公平感が生じる可能性があります」

 テレビ新潟放送網。

「NHKの常時同時配信の負担のあり方によって、NHKのさらなる収入源が安定的になることで、NHKと民放局の収益格差が拡大することは、番組制作面での格差が拡大することに繋がり、民放局の事業圧迫とともに、自助努力だけでは補えない情報格差に繋がる可能性があることを強く懸念します」

 放送の自由は大事やないか研究会。

「世間さまは甘ないで。みんな思うとる。『スマホの時代に、NHK要るんかいな!?』
 ネットでも受信料取りたかったら、この問いに、納得いく答えを示してもらわなあかん。よその国でも、裁判沙汰になったり、大騒ぎしとったやろ。誰でも、いつでも、どこでも情報発信できるようになったのに、何でNHKだけ特別扱いせんならんのか。
(中略)一方向の放送と違って、ネットは双方向で情報を発信できる。公共メディアとしては、ふつうの市民が自由に発言できて、異論を述べても炎上しないような場を設けるべきや。それがなければ、ネットメディアとは言えへん。同時配信やVODだけやったら、ただの放送もどきで、ネットの受信料なんて正当化できへんがな。

(中略)ネットでも受信料は取るが、視聴者の言うことは聞かんー。それじゃ困る。これまで、受信料を払うわしらの意向は、経営委員会や番組審議会を通じて、NHKの経営や番組編成に反映されることになっとった。視聴者がNHKの株主ちゅうわけや。そやけど、わしら、株主の実感ないわ。経営委員は首相のお友達ばっか任命されるし、その経営委員が選んだ会長は『政府が右と言ったら、われわれが左と言うわけにはいかない』とか言い出すし。

(中略)受信料制度を見直すなら、視聴者がNHKをコントロールできる仕組みを再考せなあかん。不祥事の再発防止とかやなくて、これがほんとのガバナンス(組織統治)なんやから。そういくことも考えずに、受信料を義務化するなんて、もってのほか。NHKがおかしなことをやったら、視聴者が受信料不払いで意思を表示できるよう、支払い督促などの法的措置もやめるべきや」

 こうした意見に対し、答申を出したNHK受信料制度等検討委員会は、「ご指摘を踏まえ、答申にその旨の記述を追加しました」とした上で、「これまで公共放送として培ってきた蓄積を生かし、人々が必要とする公共的な価値の実現に貢献していくことが期待される」と、答申を締めくくっている。

「公共」としてのニーズに応えることができなければ、誰もネット経由でNHKの番組を見ようとは思わない。そうなった時、テレビ離れの原因が「テレビ」なのか「NHK」なのかがハッキリする。
(文=明石昇二郎/ルポライター)

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