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ピエール瀧問題、なんでも“販売自粛”は再考すべき…被害者のいない犯罪、推定無罪の法則

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2019年1月に発売された電気グルーヴ結成30周年記念アルバム『30』(発売はソニー・ミュージックレーベルズ)。現在、流通は停止されている。

 2019年3月に覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されたピエール瀧被告の関わった作品の放映や出荷の自粛をめぐり、この2カ月間、日本中で論争が繰り広げられた。

 周知の通り、所属レコード会社のソニー・ミュージックレーベルズは、3月12日の逮捕直後の3月13日、瀧被告(当時は容疑者)の所属するテクノユニット・電気グルーヴのCDや楽曲の配信・出荷の停止および回収を決定。

 一方で東映は、瀧被告の出演する映画『麻雀放浪記2020』のノーカット上映を決めた。東映の多田憲之社長は記者会見で、「映画はテレビ番組やCMと違ってクローズドメディアである」と述べ、観るか観ないかの選択が観賞者に委ねられていることを上映の理由に挙げた。同作はその後、4月5日に公開を迎えている。

 自粛すべきか否か。自主回収は、「コンプライアンス上の理由」という建前のもとに行われた、上場企業であるがゆえの“ことなかれ主義”、という受け止め方もできるかもしれない。その一方で、「作品には罪がない」という自粛反対派の抗弁も、それはそれで少々情緒的にすぎるようにも思われる。

 そもそも、この種の問題については、公式の(あるいは共通の)ガイドライン等が業界団体等によって設けられているわけではない。各社の判断が一貫性を欠き、ケースバイケースの対応となってしまうのは、やむを得ない側面もあるだろう。

 そんななか、「日本エンターテイナーライツ協会」なる団体がさる3月18日、「芸能人の不祥事等によるドラマ・映画等の放送、CD等発売の自粛について」という声明を出し、話題となった。声明文は「私たちは、テレビ、映画、音楽等のエンターテインメントに関わる各関係者に対して、ドラマ・映画の放送・上映自粛、及びCDの発売自粛について、冷静かつ慎重な対応をすることを求めます」と、安易な“自粛”に対して警鐘を鳴らし、注目を集めている。

 弁護士たちが芸能人の権利を守る目的で創立したこの「日本エンターテイナーライツ協会」の共同代表理事である河西邦剛弁護士に、今回の声明の真意を聞いた。

レイ法律事務所に所属する河西邦剛弁護士

薬物使用に“被害者”はいるのか

――日本エンターテイナーライツ協会は、芸能人が不祥事等を起こしても、有罪判決を受けるまでは無罪として扱うという「推定無罪の原則」を論拠として、「過度な自粛について、冷静かつ慎重な対応をすることを求めます」という声明を出しました。その真意はどこにあるのでしょうか?

河西邦剛弁護士(以下、河西弁護士) 日本では、出演者が逮捕されると、その出演作品の放送を即時に“自粛”する傾向があります。しかし、著作権やその他の権利関係などの視点から眺めた場合、法的には、制作委員会やテレビ局が放映・放送することは可能です。つまり、「放映・放送する、しない」というのは、あくまで関係各社それぞれの自主的な判断で下されているに過ぎないわけです。にもかかわらず昨今の日本では、“逮捕=自粛”という対応が半ば常識化してしまっています。

 われわれ日本エンターテイナーライツ協会としては、法と芸能人の権利を尊重する立場から、そのように一律に判断するのではなく、個別・具体的に判断してよいのではないかと考え、あの声明を出したわけです。

 では、どのような観点から「個別・具体的に判断」すればよいのか。まず挙げられるのが、「被害者のいる犯罪かどうか」という視点です。出演者が被害者のいる罪を犯したときには、自粛を判断する際に当然、被害者の感情を考慮しなければならない。被害者が、事件後も変わらずテレビ番組や映画などに出ている加害者を目にすれば、「なんら社会的な制裁を受けていないではないか」といった不満を抱くことは当然あり得るでしょう。

 被害者のいる犯罪として、特に非難の対象となりやすい犯罪といえば、性犯罪や交通事故などが代表的でしょう。ところが、ピエール瀧被告の場合はどうか? 覚醒剤取締法違反という犯罪においても、もちろん間接的には多くの人に迷惑をかけているわけで、広義の被害者は存在するでしょう。しかし、その犯罪そのものにおける直接的な被害者というのは、先に挙げた性犯罪や交通事故などとの比較でいえば、ないと考えてよいのではないか。

 もちろん、直接的な被害者が発生していないから軽微な犯罪だ、というわけではない。あくまでも、罪の軽重についてはおくとして、少なくとも作品の放映や販売の自粛を判断するための材料として、被害者感情については考慮しなくてもよいケースといえるのではないか、ということです。

――では、ほかには、どんな判断基準があるのでしょう?

河西弁護士 その出演者が出演する媒体の種別は何か、という基準があると思います。例えばCMは、クライアント企業が広告代理店に発注して、広告代理店が芸能事務所との間で出演契約を結ぶ仕組みになっていて、タレントと商品が強くリンクしているため、罪を疑われているタレントが出演しているCMの放映を、クライアント企業はよしとしないでしょう。逮捕、即CMの内容が差し替えとなって、場合によっては違約金が発生し、広告代理店が芸能事務所に損害賠償を請求するという流れになることも十分あり得る。

 さて、ではテレビはどうか。有料チャンネル等はともかく地上波テレビは、たとえ容疑者を観たくなくても、チャンネルをまわせば出演番組が目に飛び込んでくるという性質を持っています。観ないようにするにはチャンネルを変えなければなりませんが、その負担を視聴者に強いることは合理的でないと考えられます。だから、今回のNHKのように、出演シーンを削除する措置はやむを得ないという判断もあります。

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