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スシロー、超ハイテクな店舗の全貌…「回転寿司総合管理システム」で顧客満足度を極大化

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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スシローの店舗(「Wikipedia」より)

 最近、回転寿司チェーン「スシロー」の話題が絶えない。運営会社のスシローグローバルホールディングス(HD)の業績は好調で、業界では独走状態が続いているが、そういった状態に甘んじることなく、斬新な施策を次々と打ち出している。貪欲にさらなる成長を目指す考えだ。その一挙手一投足に関心が集まっている。

 6月26日に改装オープンした新型店「スシロー伊丹荒牧店」(兵庫県伊丹市)は、大きな話題を集めた。会計や持ち帰り商品の受け渡しを自動化するシステムを試験導入し、圧倒的な省力化を実現した。利用客の利便性を高めるとともに、従業員の負担軽減を図る考えだ。

 まず、入店した客を「自動受け付け・案内システム」で席まで無人で案内する。また、画像認識を用いた会計システムも導入しており、テーブルの両端に設置したカメラで客がレーンから取った皿ごとの価格と数を自動で計測する。会計の待ち時間を短くするほか、数え間違いのトラブルを減らす狙いだ。

 客が専用のウェブサイトで事前注文した商品を店舗で受け取れるロッカーも設けた。注文時に発行されるQRコードをロッカーにかざすと扉が開き、待ち時間なく商品を持ち帰ることができる。

 セルフレジも導入した。QRコードをレジに備え付けられた端末にかざし、店員を介さずに客自らが会計する。

 これら一連のシステムで、入店してから退店するまでの間に生じる利用客のあらゆる待ち時間を大幅に減らすことができる。利用客のストレスは大幅に軽減されそうだ。

 従業員の負担軽減につながるシステムも導入した。

 厨房内に「キッチン内オートウェイター」を導入。従来は、つくった商品を注文客に直結したレーンまで厨房内を移動して商品を流す必要があったため、無駄な時間が生じていた。新たに導入したシステムでは、厨房内にレーンを張り巡らし、つくった商品を目の前にあるレーンに流せば、注文客のところまで一気に運ぶ。厨房内を歩き回る必要がないのだ。

 こうしたシステムを導入することで、利用客の利便性を高めるほか、省力化を図って捻出した時間をすしの味に直結する調理作業に充てるようにする。顧客満足度の向上と従業員の負担軽減の両立を狙う。

IT活用が進むスシロー

 スシローはこういったITを活用した経営の効率化が得意といえる。

 2002年に「回転すし総合管理システム」を導入。皿にICチップを付け、皿ごとの販売動向を管理するようにした。これにより、どの客が、何のネタを、いつレーンから取ったのかをリアルタイムで把握できるようになったため、高い精度の需要予測が可能となった。それを基に、1分後と15分後に客が求めるネタや皿数を予測し、レーンに流す。その結果、廃棄ロスを減らすことにも成功した。また、レーンを一定の距離移動したネタは、自動的に廃棄する仕組みを取り入れている。たとえば、マグロは 350メートル(約40分程度)で自動廃棄する。レーンには常に新鮮なネタだけが流れるようにしているのだ。

「回転寿司総合管理システム」などで集まるデータを、高額な費用をかけずに分析するため、スシローはアマゾンのクラウドサービスを活用している。

 スシローは年間10億件、4年間で累計40億件にまで達したデータを分析するため、12年からアマゾンのクラウドサービスを活用したデータ分析システムへの移行を進めてきた。これだけのデータを分析する自前のシステムを構築するには高額な初期投資が必要となるが、アマゾンのクラウドサービスであれば導入コストが安く済む。

 スシローはこうして膨大なデータをITを駆使して分析し、販売増やローコスト運営につなげている。

 スシローの原価率は約50%と高い。そのため、原価以外のコストを徹底的に削減しないと十分な利益を出すことができない。また、セントラルキッチン(集中調理施設)ですしネタの加工を一括で行って各店に配送する方式をとる競合が少なくないなか、スシローは04年にセントラルキッチンを全面廃止し、店舗で調理する方式に切り替えたため、その分の手間やコストを吸収するためには、さらなるコスト削減が必要となる。そのため、ITを活用した効率的な運営が欠かせないのだ。

 こうしたIT活用などが功を奏し、スシローの売上高販管費比率は競合のなかでも低く抑えることができている。18年度は、くら寿司が49.2%、かっぱ寿司(カッパ・クリエイト)が50.1%、元気寿司が53.9%となっているのに対し、スシローは44.9%だった。スシローの販管費比率の低さのほどがわかる。

元気寿司との経営統合は白紙か

 スシローの業績は好調だ。18年9月期(国際会計基準)の連結決算は、売上高に当たる 売上収益が前期比11.8%増の1748億円、本業のもうけを示す営業利益は27.3%増の117億円、最終的なもうけを示す純利益は14.9%増の79億円だった。大幅な増収増益だ。

 スシローは既存店の業績も好調に推移している。5月の既存店売上高は前年同月比9.9%増と大幅な増収だった。プラスは19カ月連続。通期ベースでは、18年9月期が前年同期比4.4%増と好調 だった。19年9月期上半期(18年10月~19年3月)も6.9%増と好調が続いている。

 スシローの既存店売上高の好調さは際立っている。競合のくら寿司は18年10月期が0.7%増とわずかに前年を上回ったものの、19年10月期上半期(18年11月~19年4月)は不適切な動画を撮影・投稿した問題などが響き、前年同期比4.0%減と大きく沈んでいる。かっぱ寿司は不振から脱しつつあるが、反転攻勢はこれからだ。一方、元気寿司は好調で、既存店売上高は5月まで15カ月連続で前年を上回っている。

 このようにスシローの業績は好調なわけだが、そのためか、スシローは元気寿司との経営統合に向けた協議を中止することを発表している。両社は規模拡大による食材の調達力強化や海外での共同展開などを狙いとして統合に向けて話を進めていた。

 両社は協議中止の理由について、「国内市場における将来的なブランド戦略と、アジア地域における店舗展開方式の違いが明確になった」と説明。国内ではスシローは回転レーンを備えた店舗が主流なのに対し、元気寿司は回転レーンではなく特急レーンで商品を提供する「回らないすし」が主流。海外進出ではスシローが直営、元気寿司がフランチャイズを志向するなど、方向性に違いがあった。

 それに加え、両社とも業績が好調で、単独路線で成長を目指したほうが得策と判断したとみられる。

 スシローは新業態の立ち上げや首都圏への出店といった、従来とは異なる戦略を矢継ぎ早に打ち出してもいる。

 スシローは17年8月に新業態となるすし居酒屋「杉玉」を立ち上げた。スシロー業態に次ぐ第2の収益の柱とする考えで、これまでに7店を出店、今後はフランチャイズ展開も視野に入れて出店を加速させる方針だ。

 スシロー業態については今後、郊外への出店を継続しつつ、都心部への出店を強化していく。JR 山手線の沿線に重点的に出店する方針を5月に発表。出店してほしい駅を一般から募るなど、都心部攻勢への準備を進めている。

 スシローは業界最大手として、さまざまな施策を矢継ぎ早に打ち出している。どれも先進的で、今後の展開が楽しみだ。次はどのような手を打ってくるのか、関心が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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