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タワーマンション居住の“5大リスク”…10年後、東京の湾岸エリアはゴーストタウン化?

文=池田利道/東京23区研究所所長
タワーマンション居住の5大リスク…10年後、東京の湾岸エリアはゴーストタウン化?の画像1
中央区晴海地区(「Wikipedia」より/妖精書士)

 古典落語の名作「芝浜」。なまけ者の魚屋・勝五郎が女房に尻を叩かれて芝の雑魚場に仕入れに行くが、朝早すぎてまだ市場が開いていない。仕方なく顔でも洗おうかと思った浜で、ずしりと重い財布を拾う。噺はここから始まる。

 芝雑魚場の跡はJR田町駅の北、線路に接した山手線の内側にある。つまり、今の山手線が江戸時代の海岸線。実際、明治のはじめに汽笛一声新橋駅を発車した汽車は、芝のあたりは堤防の上を走っていたという。

 東京の歴史は埋め立ての歴史でもある。埋立地は、江東区の辰巳団地や品川区の八潮団地のように住宅用地として使われる例もあったが、多くは倉庫や工場用地として利用されていた。

 1980年代の末、中央区佃島の北端で「大川端リバーシティ」と名づけられたタワーマンション(以下、「タワマン」と略称する)群の開発が始まる。都心居住の嚆矢となるメモリアルな出来事であると同時に、湾岸の埋立地が住宅開発されていく先駆けともなった。現在のように湾岸部にタワマンが建ち並ぶようになるのは1990年代の後半から。せいぜい四半世紀くらい前のことにすぎない。

五輪特需で高まる湾岸への期待値

 図表1は、中央、港、江東、品川の各区の湾岸埋立地(20地区)の人口を追ったものだ。95年には11万人強だった人口が2015年には24万6000人に、さらに19年1月には27万人以上に膨れ上がっている(ただし、19年は住民基本台帳による数字であり、国勢調査人口とは単純比較できない)。図表に併記した近年の人口増加率を見ても、湾岸部での住宅開発が現在も衰えることのない勢いで進行中であることがわかるだろう。

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 図表2では、そのなかで近年、特に人口の増加が著しい地区をピックアップした。人口増加率トップの品川区勝島地区は、もともと人口が数千人程度しかなかったところに大規模タワマンの開発が進んだため、数値が大きく跳ね上がったという背景があるが、それ以外はオリンピックがらみの地区が上位に並んでいる。

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 2位の中央区晴海地区は選手村ができる場所。「コンパクト五輪」のコンセプトは崩れ去ったとはいえ、大会会場の集積度がもっとも高い江東区湾岸エリアの中心である豊洲地区が3位。4位は五輪までに暫定開通する環状2号線(いわゆる「マッカーサー道路」)沿道の中央区勝どき地区。そして、これも五輪イヤーに暫定開業する山手線新駅のおひざ元である港区芝浦地区が5位。高まる期待が五輪関連地区の住宅開発を勢いづけていることが、手に取るようにわかる。

高齢者は上層階がお好き?

『国勢調査』の公表値で追うことができる高層マンションのデータは15階建て以上まで。町丁別の詳細データとなると11階建て以上まで。タワマンと呼ぶには役不足の感も否めないが、図表1で取り上げた20地区の住宅構成(世帯数ベース)は11階建て以上の共同住宅が77%を占めることからも、「湾岸=タワマン」と考えて大きな間違いはない。

 あらためてタワマン(前述した通り15階建て以上までしかデータを追うことができないため、正しくは「高層マンション」)について、おさらいをしておこう。15階建て以上の共同住宅に住んでいる人の割合は、全国平均では1.6%、東京23区平均でも5.1%にすぎないが、東京の都心ならびに湾岸エリアを抱える区では突出して多い。

池田利道/東京23区研究所所長

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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