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タワーマンション居住の“5大リスク”…10年後、東京の湾岸エリアはゴーストタウン化?

文=池田利道/東京23区研究所所長

災害時に露呈するタワマンの居住リスク

 子育て、高齢者、防災は高層階居住に伴う不安である。高層階で育った子どもは家にこもりがちになるため母親との心理的な密接度が高まりすぎ、発育の過程で数々のリスクが高まるとの指摘がある。由々しき問題だが、親が積極的に子どもを外に連れ出すようにすれば防げるという面もある。

 しかし、高齢者はそうはいかない。エレベータに乗らなければ外出できない生活は、若い人ならなんでもないことだが、歳を取ると大きなバリアに変わる。そうでなくても外出が億劫になりがちな高齢者にとって、高層階居住はひきこもりを促す要因となることが容易に想像できる。しかも、プライバシー絶対重視という名の、近隣とのつながりを欠いたタワマン生活。その先にあるのは高齢者の孤独化であり、ひいては孤立死という悲惨な結末につながっていく。

 11階以上の高層階に住むひとり暮らしの高齢者、あるいは夫婦ともに65歳以上の高齢者夫婦。こうした「孤立化予備軍」が高齢者全体に占める割合が、中央区では15%、港区では9%、千代田区では8%、江東区でも7%を数える。

 平時はまだいい。大地震などの災害に見舞われると、タワマンのもろさが一気に露呈してくる。建物は最新鋭の耐震構造だし、地盤も公共が関与して整備された埋立地なので、液状化などの問題もそれほど心配しなくていいのかもしれない。しかし、ライフラインはネットワークだ。どこか弱いところで途絶が起きると、広い範囲に被害が及ぶ。

 タワマンは電気なしに生活できない。ポンプが止まると水も出ない。水が出ないとトイレが使えない。高層階居住の選択は、こうしたリスクと背中合わせにあることを覚悟する必要がある。それは、「下界」を見下ろす優越感だけで解決できる問題ではない。

10年後には湾岸のタワマンがゴーストタウン化

 最後の資産保全の不安は恐怖のシナリオだ。マンションの寿命は40~50年。うまくつくってうまく管理すれば100年近くもつのだろうが、間取りをはじめ、生活の場としての陳腐化は否応なく進む。日本人は新しいものに価値があると考える傾向が強いため、実際は35年ぐらいで建て替えとなる。

 35歳で分譲マンションを買ったとすると、35年後は70歳。当然、住民は高齢化している。子どもたちは古ぼけた住宅など見向きもしない。そんな状況下でのタワマンの建て替えは、事実上不可能に近い。修繕費にしても高額になるため、必要な修繕すら進んでいないという事態も想像できる。その結果として待ち受けているのは、ゴーストタウン化したタワマンの姿だ。

 先に指摘したように、東京の湾岸エリアにタワマンが建ち始めてから、まだ四半世紀。しかし、逆から見れば、10年後に東京の湾岸エリアはゴーストタウン化を始める危険性を抱えていることになる。マンションポエムは、この問題にどう答えるのだろう。

(文=池田利道/東京23区研究所所長)

池田利道/東京23区研究所所長

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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