日本列島に甚大な被害をもたらした台風19号。自衛隊への救援要請をめぐり、各地で市町村や県の対応が物議を醸している。神奈川県山北町では、同町が静岡県駒門駐屯地の部隊と直接連絡を取った。自衛隊は災害時の自主派遣の3要目を踏まえて、同駐屯地から給水部隊が現場に急行したものの、県独自の給水車派遣の手続きと重なり、現場は混乱。自衛隊は給水せずに引き返すことになった。
福島県でも「自衛隊の取り合い」
阿武隈川などの決壊によって、死者24人の被害が出た福島県内でも「自衛隊の取り合い」をめぐり、市町村間で不満が噴出している。同県関係者によると、伊達市梁川町では過去最大規模の床上浸水が発生。多くの住民が水浸しの市街地で孤立する被害が発生した。だが、同市は、自衛隊の派遣を要請しようとして県への通報に時間がかかってしまった。一方、同県庁でも各地から自衛隊の出動要請が殺到し、混乱。伊達市からの要請が正式に受託されたときには、最寄りの福島駐屯地(福島市)の大半の部隊は約70㌔東の太平洋沿岸の南相馬市や相馬市に出発した後だった。
阪神淡路大震災を契機に、自衛隊の災害派遣のあり方は変わった。ここで、もう一度、災害時の自衛隊派遣要請の手順を確認してみる。
「一般派遣」と「自主派遣」
自衛隊の災害派遣には、都道府県知事の要請による「一般派遣」と、自衛隊が緊急性を考慮して部隊を被災地に派遣する「自主派遣」の2つがある。自衛隊ホームページは自主派遣について次のように説明している。
「市町村長から通知を受けた防衛大臣またはその指定する者は、災害の状況に照らし特に緊急を要し、(都道府県知事からの)要請を待つ余裕がないと認められるときは、部隊などを派遣することができます。
防衛大臣またはその指定する者は、特に緊急を要し、要請を待ついとまがないと認められるときは、要請がなくても、例外的に部隊などを派遣することができます。
この自主派遣をより実効性のあるものとするため、平成7年(阪神淡路大震災の年)には防災業務計画を修正し、部隊等の長が自主派遣をする基準を定めました」
防災業務計画では派遣にあたって次のような基準がある。
1) 関係機関への情報提供のために情報収集を行う必要がある場合
2) 都道府県知事などが要請を行うことができないと認められるときで、直ちに救援の措置をとる必要がある場合
3) 人命救助に関する救援活動の場合など