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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

所得税を逃れるため膨大な労力かけ海外移住→税務調査で「日本居住者」とされ追徴課税!

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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。やったことのない売上除外の反対科目は「貸付金」です。

 日本より税率の低い国に移り住むのは、お金持ちならみな考えることだと思います。しかし、祖国を捨て、友人のいない国に長い期間移るのは、容易ではありません。税法では、生活の本拠がどこにあるかが、課税のポイントとなりますが、日本が恋しいのか、中途半端な移住をして税を免れ、税務調査によって否認される例は多々あります。

 日本のルールでは、日本に住所があると「居住者」、それ以外を「非居住者」といいます。「住所」は客観的事実によって、生活の中心がどこにあるかで判断されます。住民票や国籍だけで判断されるわけではなく、職業や家族関係、滞在日数も考慮されます。

 また、日本に住所のない「非居住者」であっても、「国内源泉所得」であれば、所得税が課せられます。国内源泉所得とは、日本国内の不動産の賃貸収入や日本で働いたときの賃金などが該当します。

 逆に、居住者が外国で収入を得た場合は日本の所得税が課されますが、その収入が外国でも課税されていた場合は、二重課税とならない制度が設けられています。

 さらに、非居住者に国内源泉所得があっても、恒久的施設の有無で課税関係が変わります。たとえば、日本に活動の拠点となるホテルがあれば恒久的施設を有し、単なる倉庫だけであれば恒久的施設を有しないことになります。

 そんな国ごとに異なる税制や恒久的施設の制度を利用して、非居住者を装い、課税を免れる人は後を絶ちません。

1年の大半をマレーシアで過ごしていても「日本の居住者」として課税

 Aさん(仮名)への税務調査の事例を紹介します。

 税務署は準備調査の段階で、Aさんがマレーシアに引っ越していることを把握。年収は1億円以上ありましたが、日本では確定申告をしていませんでした。ちなみに、会社員や会社役員でも、年収が2000万円を超えていたら確定申告が必要です。

 非居住者であるため、会社から支給される役員報酬の約20%を源泉徴収され、日本にはそれを納めているのみでした。Aさんに役員報酬を支払っている法人は、Aさんが設立し、順調に規模を拡大していましたが、マレーシア移住前にAさんを代表取締役から取締役に分掌変更し、その後は実子が代表取締役に就いています。

 調査当日、調査担当者は、Aさんが日本国内での所得税の納付を免れるために非居住者を装っていると考え、パスポートとクレジットカードの利用明細を確認しました。

 Aさんは、1年の半分以上をマレーシアで過ごし住民票もマレーシアにあるものの、マレーシア国内に自宅はなくホテルに滞在していました。もちろん、ホテルに住んでいることだけをもって「マレーシアに住所がない」と認定することはありませんが、日本国内の自宅は引き払っておらず、そこに家族が住み、マレーシアに転出したとされる前から使用する自室もそのままになっていました。

 年間の滞在日数と住民票以外に、マレーシアを生活の本拠とする根拠はありません。「住所」の認定にあたっては、これらだけでなく、さまざまな事情を総合勘案して判断されます。たとえば、仕事です。

 Aさんの業務内容を確認したところ、代表取締役から取締役になったものの、会社は実質的にAさんによって支配されていました。出勤する日数こそ減ったものの、業務内容は以前となんら変わりがありませんでした。

 さらに、マレーシア移住の理由も不明瞭で、粘り強く追求したところ、所得税を忌避するために住民票を移したことを認めました。

 そこで、居住者として認定し、役員給与や自社株からの配当、マレーシアでの収入を、「日本の居住者」として追徴課税することになりました。

 相続税や贈与税を免れるために海外への移住を試みる人はよくいます。代表取締役という重要な地位にいても、所得税のためだけに海外へ移れば、ビジネスへの影響がないとは思えません。庶民のぼくにはわからない気持ちですが、何よりも優先して税金から逃れたいものなのでしょうか。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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