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ワタミ、新型コロナウイルスで中国から撤退…ユニクロ&無印も打撃、ラオックスはリストラ

構成=長井雄一朗/ライター
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多くの外国人観光客らがマスクを着用して歩く太宰府天満宮の参道(写真:毎日新聞社/アフロ)

 新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が日本企業の経営に打撃を与えている。インバウンド需要で業績を拡大してきたラオックスは、中国人観光客の減少が業績に悪影響を与えることを懸念して、160人規模の早期希望退職を募集することを発表した。

 東京商工リサーチの調査によると、2月14日時点で合計223社の上場企業が新型コロナウイルスの影響を受けて対応に追われており、これを一因として業績を下方修正した企業は45社にのぼる。「新型コロナウイルスの終息時期が見通せないことで、企業業績への悪影響が懸念材料になっている」と指摘する、東京商工リサーチ情報本部情報部の増田和史課長に話を聞いた。

ワタミは完全撤退、ユニクロや無印にも打撃

――すでに多くの企業が新型コロナウイルスの影響を受けていますね。

増田和史氏(以下、増田) 決算短信や業績予想の修正などで新型コロナウイルスの影響や対応について発表した上場企業は223社に達しています。そのほか、東京商工リサーチの独自調査やヒアリングにより、工場、事務所、店舗の稼働中止などの対応を行った上場企業は28社あることが判明しており、合計251社の上場企業が影響を受けているということになります。また、業績の下方修正の一因に新型コロナウイルスの影響を挙げたのは45社、影響は精査中としながらも業績への懸念を発表したのは148社です。

 多くの業界が中国とのビジネスを密接に展開するなか、中国で製造した部品を日本の工場で組み立てるといった分業化が進展しています。中国では春節休暇が終わった後も休業を延長する企業や生産が滞っている地域が多く、サプライチェーンも混乱しています。そのため、中国から部品を調達できずに生産ラインが止まった日本の工場もあります。逆に、日本企業が中国企業に部品や製品を販売しているケースでは、米中貿易摩擦に加えて新型コロナウイルスがダブルパンチとなって、中国経済の冷え込みや設備投資の減退につながる懸念があります。

 たとえば蛇の目ミシン工業は中国の工場に製品を販売していますが、経済停滞や設備投資の意欲減退などの影響を受けて、20年3月期の業績予想を下方修正しました。

――製造業では悪影響が多方面にわたりそうですね。

増田 新型コロナウイルスの影響・対応を発表した251社のうち、業種別では製造業が156社で62.1%を占めています。工場の操業停止や休業延長を発表しているのは、日産自動車、トヨタ自動車、ホンダ、ヤマハ発動機、リコー、TOTO、日本電産、セイコーエプソン、パナソニックなど29社です。渡航禁止や帰国指示を出している企業は26社ですが、これは氷山の一角でしょう。多くの企業は中国出張なども取りやめているようです。

 ちなみに、製造業以下は、サービス業24社(構成比9.5%)、小売業19社(同7.5%)、卸売業17社(同6.7%)、運輸業13社(同5.1%)、その他22社(8.7%)となっています。

――インバウンドの動向に左右されやすい小売業では、どのような影響がありますか。

増田 製造業と同様に厳しいです。春節でのインバウンド需要を期待していた大手百貨店などはアテが外れた格好になり、月別の売り上げ速報を見ても売り上げが減少しています。

 一方で、中国に出店している三越伊勢丹ホールディングス、眼鏡チェーン・JINSのジンズホールディングス、焼肉きんぐ・ゆず庵・丸源ラーメン・お好み焼本舗を運営する物語コーポレーション、ユニクロのファーストリテイリング、無印良品の良品計画など、13社が一時的に店舗休業やサービス停止などに追い込まれました。

 無印良品やユニクロはショッピングモールに出店するケースも多く、ショッピングモール自体の閉鎖により、結果的に多数の店舗が休業などを余儀なくされています。

 また、ワタミは中国に展開している全7店舗の撤退を決めました。2005年に中国本土1号店として深センに出店して以来、「和民」「響和民」「三文魚伝説和民」のブランド名で上海、蘇州、広州に出店していましたが、売り上げの激減により事業撤退となります。ワタミの広報担当者は「中国は魅力的な市場で今後も拡大していく予定でしたが、売り上げ減が見込まれ、先行きの見通しが立てられなくなった」とコメントしています。

 また、宿泊業では西武ホールディングスのホテルで予約のキャンセルが相次いでおり、業績が下方修正されました。さらに、中国人に人気の静岡県などの地域でも旅館やホテルのキャンセルが多発するなど、インバウンド消費に影響を与えています。

“新型コロナ倒産”発生の可能性も

――新型コロナウイルスの発生地とされる中国武漢市には、どのくらいの日系企業が進出しているのでしょうか。

増田 39社が進出し、拠点は45カ所に展開しています。自動車、自動車部品、大手電機などの有力メーカーが武漢に製造拠点を設けています。また、武漢は人口1000万人を超える大都市なので、工業都市であると同時に消費都市としての顔も持っています。当然、サービス業の進出も多く、影響は小さくありません。

――日本と中国の双方にとって、経済に大きな打撃となっていますね。

増田 もはや日中の経済は切り離して考えることができない状態で、インバウンドに依存している企業は倒産の危険も浮上しています。今後は新型コロナウイルスがいつ終息するかが重要になってきますが、春に収まらず夏まで長引けば、東京オリンピックなどへの影響も計り知れないものになりそうです。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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