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垣田達哉「もうダマされない」

新型コロナ、スポーツジムで感染…スポーツ観戦・コンサート・給食は極めて危険の可能性

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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新型ウイルス肺炎が世界に拡大 武漢市の病院(写真:Featurechina/アフロ)

 国は新型コロナウイルスの感染リスクを減らすために「満員電車を避け、テレワークや時差通勤をしろ」と勧める。感染症の専門家も、テレビなどで「ラッシュアワーは危険」と言う。一方で、各種イベントについては、集団感染がある地域では自粛を検討することを求めているものの、一律自粛することは要請せず、つまり「主催者の判断」に任せていた。その後、26日になってようやく政府は、今後2週間はイベントの中止や延期などを要請する方針を表明した。

 そもそも、満員電車よりサッカー、野球、大相撲などのスポーツ観戦やコンサート、パーティーのほうが感染の確率は高いのではないだろうか。新型コロナウイルスは、飛沫感染が多いという。満員電車の中では、ほとんど会話をしないし、咳き込む人も非常に少ない。つり革や手すりによる接触感染があれば、感染者は飛躍的に増えているだろう。

 一方、スポーツ観戦では、応援歌などを歌うことを中止しても、試合中は声を張り上げて応援する。その飛沫は凄まじいものがあるだろう。しかも「観戦しながら、しゃべる、食べる、飲む」を繰り返す。後ろから大声で叫べば、高いところから低いところに大量の唾を飛ばすことになる。多数の観客が、密着あるいは1m範囲内の距離で、前後左右、唾を大量に吐き出しているのだ。

 サッカーや野球での得点場面や、大相撲で応援している力士が勝った時などは、隣や周りの人と喜び、雄叫びを上げながらハイタッチすることもある。コンサートでは、皆で一緒に大声を上げて合唱する。数千人、数万人の観客のなかに感染者がいれば、まさにパンデミック(爆発的な感染)が起きるだろう。満員電車を避けるためにテレワークをするなら、スポーツ観戦こそテレビ中継で見るべきだろう。

 筆者は、2月8日付のこの欄で「クルーズ船の感染はブッフェの可能性がある」と指摘したが、感染しやすい場所の一つが「食事」だという気がしてならない。クルーズ船に入った厚生労働省の職員や検疫官に感染者が続々と増えているが、その震源地は食堂ではないだろうか。テレビで実際に乗船した医療関係者が匿名での取材に「食事は皆で一緒にした」と答えていた。そこで、おしゃべりもしたという。

 食事を共にし、おしゃべりをすることは、飛沫感染の可能性が非常に高いはずだ。そういう意味では、パーティーや宴会も要注意のイベントだ。政治家の資金集めパーティーも立食形式が多く、至近距離で会話をすることが多い。感染リスクは高いはずだ。

日本全体が汚染国とみなされるリスク

 もう一つ気になるのが、スポーツジムでの感染があったことだ。知人、友人がジムで一緒になり、おしゃべりをしたことが、飛沫感染の原因かもしれない。しかし、もし汗が感染原因だとすると要注意だ。中国では「便や尿からもウイルスが検出された」という報道もあった。これが事実かどうかはわからないが、もしも汗にウイルスが含まれているとなると、人の汗を浴びることが多いスポーツジムや温泉施設、体操教室なども感染源になるかもしれない。

 2月24日のNHKのニュースでは、国を代表する専門家が出演し、「今後1~2週間が感染拡大のスピードを抑えられるかどうかの瀬戸際だ」と訴えた。しかし、感染を拡大させるリスクが高いのは「対面で人と人との距離が近い接触が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境だ」という。つまり、対面でないスポーツ観戦などはリスクは高くないという意味にとれる。対面しないイベントであれば、リスクは高くないなら、マラソンや卒業式なども中止にする必要はないかもしれない。

 そして、対面で近距離で会話をする社員食堂や給食のほうがよほど危険ということになる。飲食店やショッピングセンターのフードコートなども、リスクが高い場所になるかもしれない。

 厚労大臣や専門家の話を聞いていても、国民に不安を与えてはいけないということだろうが、危機感や切羽詰まった感じはほとんどない。「インフルエンザよりは致死率は格段に低い」「軽症の人がほとんどだ」という話ばかりだ。満員電車は危険だからテレワークをしろというが、大規模なイベントで会場に向かう交通機関の満員は危険だとは言わない。試合前の会場入りや試合後の会場出口付近の大群衆は、問題ないのか。特に、試合後などは皆が大声で叫びながら会場を後にする。

 今回、政府がイベント中止の要請をする方針を表明するまで、大きなイベントは中止にならず、小規模なイベントは次々と中止になってきた。危機感を持つべきなのか、持つ必要はないのか、すべては個人、主催者の判断に委ね、国や専門家会議は一切の責任は負わないという姿勢に見えた。それで本当に新型コロナウイルスは防止できるのだろうかと、筆者は疑問に感じていた。

 中国は武漢、韓国は大邱、イタリアは北部の11の町と、感染源がある程度特定できている。ところが日本は、北海道から沖縄まで、感染者は全国に広がっている。感染源を特定することができない状態だ。イタリアは、今月始まっていたミラノファッションウィーク、ベネチアカーニバルを中止にし、サッカー・セリエAの試合を延期している。

 25日に発表された政府の基本方針では、「37.5℃以上の熱があっても4日間は医者にも行かず我慢しろ」「むやみやたらと医療機関には行くな」と国民に負担を強いる。「教育機関や、企業などの事業者は、感染拡大を防ぐために大切な役割を担っている」と地方行政や事業者に感染防止の責任を押し付ける。

 具体的には一切指示を出さずに、すべての行動の責任は国民と地方自治体と企業にあるという。本当に危機感があるのなら「学校は休み、すべてのイベント・行事は中止、企業は休業する。その代わり休業補償は国がする」といった方針を、もっと早く示すべきだったのではないか。

 今回、首相が要請したのは大きなイベントだけである。すべてのイベントや行事を中止しろと言ってはいない。入試試験を中止しろとは言わない。卒業式や入学式も中止しろとは言わない。マスコミや国民の声に押されて「とにかく大きなイベントだけは中止と言っておけば国の責任は果たせる」と思っているからだ。重い腰を上げたが、大きなイベント以外にはだんまりだ。政府は「先手先手に対応している」と自慢げに記者会見で述べているが、すべてが後手後手だ。

「この1~2週間に、国民はいったい何をすればいいのか」そして「国は何をするのか」が具体的に見えてこない。国民が我慢すれば、瀬戸際といわれる1~2週間後には、本当に皆が安心できる状況になっているのだろうか。ひょっとして、今と同じような状況が続くだけではないのか。いや、もっとひどい状況になっているかもしれない。そうなっても、国や霞が関は「やるだけやった、一生懸命やった」と精神論だけを繰り返すだろう。

 おそらく「1~2週間が瀬戸際だ」という科学的な根拠はないのだろう。「国や専門家は一生懸命にやった」という姿勢をアピールしたいのではないだろうか。それならいっそ、今まで通りの生活をしたほうが良い。

「怖がり過ぎだ。正しく怖がれ」「なんでそんなに不安を煽るのだ」「そんなに深刻に考えることはない」「インフルエンザに比べれば大したことはない」と言われるかもしれないが、もしもこのまま感染拡大を阻止できなければ、日本全体が汚染国とみなされ、それが払拭くされない限り、東京五輪の中止ですむどころか、外国からは誰も来てくれなくなるだろう。

 そして何よりも、日本人の安全を脅かす新伝染病となる。新型コロナウイルスは、中国の発表によると「陰性後も陽性になる人が10%以上いる」という。ワクチンもなければ特効薬もない。まさに新型コロナウイルスは「ゾンビウイルス」だ。こんな心配が杞憂であることを願うばかりだ。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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