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セブン、問題続出でも客離れが起きにくい理由…くら寿司、大戸屋、大塚家具との決定的な違い

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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セブン-イレブンの店舗(撮影=編集部)

 24時間営業問題で揺れたセブン-イレブン・ジャパンが、圧倒的な強さを見せつけている。

 既存店売上高は2月まで5カ月連続で前年同月を上回った。2020年2月期の12カ月間でマイナスだったのはわずか3カ月だけだ。24時間営業問題をものともしないかのように推移している。

 一方、競合のファミリーマートローソンは、セブンよりもマイナスの月が多かった。2月までの12カ月間でマイナスだったのは、ファミマが5カ月、ローソンが6カ月。本稿執筆時点では、3 社とも年間累計の増減率を公表していないので詳細はまだわからないが、ファミマとローソンはセブン以上に苦戦したと言っていいだろう。

 24時間営業問題の発端は、昨年2月に大阪府東大阪市のセブン元オーナーが自主的に時短営業を始めたことだった。コンビニオーナーの過酷な労働実態が明らかになったほか、深夜の人手不足が露呈したり、コンビニのフランチャイズ契約に関する問題が噴出したりした。これを機に、コンビニのあり方が問われるようになった。

 この問題に対して、ファミマやローソンは早い段階で自社の加盟店オーナーに寄り添う姿勢を示した。営業時間の短縮実験を積極的に実施するなどして世論の懐柔を図っている。

 一方、セブンは当初、時短営業に慎重な姿勢を示していた。現状維持での中央突破を試みている。こうした姿勢の違いもあり、特にセブンに批判が集中した。この24時間営業問題では、セブンの客離れが懸念された。さらに、これ以外にも問題が噴出したため、客離れが深刻化するとの見方もあった。24時間営業問題以外の問題としては、まず昨年2月に世間を騒がせた「バイトテロ」が挙げられる。アルバイト従業員がおでんの具材を口に入れて出す動画がSNS上で拡散し、大騒動になった。

 ほかには、昨年7月にスマートフォン決済サービス「セブンペイ」の不正利用問題があるだろう。サービス開始直後から利用者になりすました第三者が登録されていたクレジットカードなどでチャージし、店で商品を購入する被害が発生した。この不正利用問題により、2カ月後にサービス廃止に追い込まれている。

 昨年11月には、おでんの無断発注問題で世間を騒がせた。本部社員が加盟店に無断でおでんの具材などを発注したことをメディア各社に報じられた。その後、セブンはかかわった社員2人を懲戒処分にした。また、過去にも同様のケースが数件あったほか、本部が把握していない無断発注があった可能性もあるとし、全店を対象に過去を遡って調査する事態にまで発展している。

 今年3月には、マスクの高額転売騒動が報じられ、批判が巻き起こった。加盟店1店が60枚入りのマスク1箱を1万6900円で売っていたことが明らかになった。新型コロナウイルスの影響で全国的なマスク品薄が続くなか、実勢価格の30倍近い価格で販売したことが批判を浴びた。

 こういった問題がセブンでたて続けに起きた。どれもイメージ悪化につながるものばかりだ。だが、既存店売上高の推移を見る限り、これら問題が客足に大きく影響した形跡は見られない。特に大きな問題といえるのが24時間営業問題だろうが、大阪市の元オーナーが時短営業を始めた昨年2月から5月までの既存店売上高は、すべて前年を上回っている。24時間営業問題をものともしないかのようだ。

なぜセブンでは客離れが限定的に収まるのか

 問題が起きて客離れを招いたブランドは少なくない。回転ずしチェーンの「くら寿司」や定食チェーンの「大戸屋」は、アルバイト従業員が不適切な動画を投稿して批判を浴び、客離れを招いた。家具チェーンの「大塚家具」は、現社長とその父親が経営権をめぐって争ったことでイメージが悪化し、客離れが起きた。こうした例は少なくない。だが、セブンはこれらと違い、度重なる問題でイメージが悪化しても客離れが限定的だ。

 なぜ、セブンでは客離れが限定的なのか。それは、セブンが他の追随を許さない圧倒的な利便性を消費者に提供しているからだ。それにより消費者は、たとえセブンが嫌いになってもセブンを利用せざるを得ない状況に置かれてしまっている。

 だが、くら寿司の場合、イメージが悪化してしまうと消費者は「スシロー」など他の回転ずし店や他の飲食店に簡単に流れてしまう。大戸屋も同様だ。大塚家具はイメージが大事な高級家具を扱うため、イメージが悪化してしまうと消費者から選ばれなくなってしまう。こうした原理が働くため、これらブランドではイメージ悪化で客離れが起きやすい。

 だが、セブンはこうした原理が働きづらい。セブンなどコンビニで集客においてもっとも重要になるのが、消費者に高い利便性を提供することだ。特に重要なのが、「近くにある」ことだ。さまざまな団体がコンビニ利用者に対して、「コンビニを利用する理由」や「利用店舗を選ぶ決め手」を尋ねる調査を実施しているが、多くの調査で 「近くにある」が最上位にきている。

 こうしたことから、消費者は贔屓にするコンビニのイメージが多少悪化しても、同程度の近さのコンビニがない限り、贔屓のコンビニを変えることはない。100メートル先のコンビニの印象が悪いからといって、わざわざ200メートル先のコンビニに行く人は少ないだろう。そのため、セブンは24 時間営業問題などでイメージが悪化しても客離れが限定的だった。

 また、セブンは同一地域に集中出店する「ドミナント戦略」をとっていることも影響しているだろう。この戦略をとることで、経営効率を上げるとともに、その地域でのシェア拡大を目指しているのだが、多店舗展開によりセブンが特定の地域において支配的地位を確立した場合、その地域の消費者はセブンを利用せざるを得ない状況に置かれる。そうすると、セブンはちょっとしたイメージ悪化では客離れは起こらない。

 さらに、圧倒的な商品力を誇っていることも大きいだろう。特にプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」の存在は大きい。同PBからは「金の食パン」など数々のヒット商品が誕生している。こうした付加価値の高い商品を抱えているため、セブンは競合他社と比べて高い販売力を有している。セブンの18年度の日販(1店舗の1日当たり売上高)は65万6000円で、ファミマ(53 万円)やローソン(53万1000円)を12万円以上も上回っている。セブンに根強いファンがいる証左といえるだろう。ファンはちょっとやそっとのことでは贔屓の店を変えることはない。

 こうした高い利便性や商品力があるため、セブンはイメージが悪化しても客離れが起きにくくなっており、24時間営業問題が直撃しても既存店売上高はそれほど落ち込むことはなかったのだ。もっとも、ボディーブローのようにじわりと効いてくる可能性はある。

 世間の関心が新型コロナウイルスに向き24時間営業問題が棚上げされていることも、セブンにとっては幸いしているだろう。だが、油断はできない。何かの拍子に同問題が再燃して、セブン批判が再び起きないとも限らない。そうなれば、さらなるイメージ悪化で大きな客離れが起きるだろう。セブンは油断せず、慎重に粛々と問題解決を図っていく必要がありそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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