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木下隆之「クルマ激辛定食」

あのマクラーレンが長距離ツアラーに宗旨替え?620馬力&最高速300キロ超、狂気の市販車

文=木下隆之/レーシングドライバー
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マクラーレンGT

 英マクラーレンが新たなフェーズに入ろうとしている。今回、「マクラーレンGT」ドライブして、そんな確信にも満ちた思いを抱いた。

 マクラーレンとはもちろん、F1コンストラクター(車体製造者)として一世を風靡した、あのマクラーレンである。スーパーカーの世界に進出してからは徹頭徹尾ぶれることなく、過激なモデルをリリースし続けてきた。そのF1の頂点を極めたマクラーレンが、速さだけではなく穏やかな乗り味が求められるグランドツアラー(GT)の世界に足を踏み入れたのである。

 最近のラインナップは、4つのカテゴリーに分けられる。ビジネス上の中心となるスーパーシリーズには、720馬力ものパワーを炸裂させる「720S」があり、さらに過激なアルティメイトシリーズには、億超えの「セナGTR」がラインナップされる。そしてベーシックなスポーツシリーズがある。とはいうものの、スポーツシリーズでさえ600馬力の「600LT」という次元だから、開いた口が塞がらない。F1での勝利数が物語るように“打倒フェラーリ”であり、メルセデスAMGを駆逐するためにロードゴーイングスポーツ界での最速争いに挑んでいるのである。

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 そう、そんなマクラーレンに新たに加わったのがGTシリーズであり、今回試乗が叶ったマクラーレンGTは、これまでのラインから外れ、長距離ツアラーとしての資質を盛り込んだのだ。“新たなフェーズ”に挑んだとしたのは、そのことである。

 斜め上方に跳ね上がるディヘドラルドア(通称:バタフライドア)は、もちろんマクラーレンの証だが、特徴的なのはリアハッチにある。これまでのマクラーレンは、エンジンをミッドシップに搭載する関係上、リアに荷室空間などなかった。

 というよりむしろ、排気管を煙突のように立てた上方排気にも挑戦している。シフトダウンなどでは、天に向かって炎が伸びることもあった。というほどに、速さのためのメカニズムが最優先とされてきたのに、そのこだわりの空間を荷室に捧げてしまったのである。

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 マクラーレンGTは、エンジンを上質なカバーで覆い、本革を貼るなどして荷室にしてしまったのである。そのためのリアゲートは自動で開閉するという快適性である。

 関係者に聞けば、ゴルフバッグが積み込めるサイズだという。実際にその空間は、フルサイズはともかく、ハーフセットのバッグならば積み込めそうな余裕があった。スキーセットの積載まで考えたというから、宗旨替えも極まれりだ。

 そう、それが象徴するように、マクラーレンGTは闇雲に速さだけを追求したわけではなく、長距離ツアラーとしての資質、つまり積載性や快適性を追い求めたのである。

 実際に乗り味は、スーパーカーとしては優しい。たとえば、フロントの車高はスイッチひとつで上下する。駐車場の車止めや、歩道の段差などでアゴを打たないようにとの配慮である。アイドルストップ機能も備える。日常性を取り入れているのだ。

 だが、それとて“スーパーカーとしては……”という注釈付きで語るのが正しい。ディヘドラルドアの開閉はいちいち物々しいし、620馬力ものエンジンが過激でないわけがない。最高速度は326km/hと案内されているのだ。狂気であることに違いはないことを報告しておきたい。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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