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「マスクしたら化粧いらない」…化粧品業界に地殻変動、4千億円のインバウンド消費蒸発

文=編集部
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「Getty Images」より

 観光庁によれば、2019年に2985万人に上ったインバウンド(訪日外国人客)の化粧品・香水の消費額は1人当たり1万4439円。客数に単価をかけた単純計算でインバウンド向け化粧品市場は4310億円。訪日客の消費全体の16%を占める。

 新型コロナウイルスの感染拡大で3月のインバウンド数は前年同月比93%減った。4月は統計史上最悪の99.9%減の2900人に激減した。4000億円市場は蒸発してしまった。

 化粧品国内最大手の資生堂は「経済活動の再開タイミングを見極めるのは困難」(魚谷雅彦社長)とし、発表済みの20年12月期通期の業績予想を取り下げた。期初の新型コロナの影響を織り込んでいない通期業績予想の売上高は1兆2200億円、純利益は775億円で年間60円の配当を公表していた。これを、いったん白紙にした。

 20年1~3月期の連結決算の売上高は前年同期比17%減の2268億円、純利益は96%減の14億円だった。地域別では日本事業の減収が目立ち、前年同期比21%減。全体の減収額(467億円)の半分を占めた。中国を中心にインバウンド需要が2月以降、約6割減ったうえ、日本人向けも3月に2割減少した。美容部員によるタッチアップ(顧客に直接化粧を施す)を自粛し、百貨店などで販売する高価格スキンケア製品の販売を縮小した。ドラッグストアでは営業を継続しているが、百貨店などの落ち込みをカバーしきれなかった。

コーセー、ポーラ、カネボウも業績が急降下

 コーセーの21年3月期の連結決算は売上高が前期比13%減の2866億円、純利益は53%減の125億円と予想している。中国人向けに人気の高い高価格帯スキンケア製品の売上が百貨店などで減少する。20年1~3月期のインバウンド売上高は前年同期比74%減の16億円。日本人向けも在宅勤務の長期化に伴い、口紅などのメーキャップ商品が売れず、日本全体でも16%の減収だった。

 ポーラ・オルビスホールディングスは20年12月期の連結業績予想を下方修正した。売上高は14%減の1900億円と従来予想から270億円引き下げた。純利益は従来予想の200億円から84億円に急減する。中国人からの人気の高い高価格帯スキンケア製品の販売が減る。20年1~3月期の連結決算の売上高は前年同期比17%減の433億円、最終損益は12億円の赤字だった。

 花王傘下のカネボウ化粧品の20年1~3月期の売上高は前年同期12%減の592億円、営業利益はわずか1億円に激減した。それでも黒字は確保した。

日本ブランドの人気が高い中国に活路を求める

 4000億円規模あったインバウンドの化粧品市場は今年はほぼゼロになる。数年間は元に戻ることはないだろう。消滅したインバウンド需要を何で埋めるのか。中国向けの電子商取引(EC)に活路を求める。

 資生堂は「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポーボーテ」などの高級化粧品に注力。日本で手にとってもらい、帰国後、中国で購入してもらう作戦が成功した。資生堂の中国向け越境EC(電子商取引)の3月の売上高は高価格帯製品が前年同月の2.6倍になった。中国の売上高全体に占めるEC事業の割合を現在の30%台から40%に高める考えだ。

 カネボウ化粧品は20年1~3月期の化粧品の売上高は12%減ったが、中国ではECの販売増で20%増えた。各社は中国人の“リバウンド需要”を取り込むことに期待している。

化粧品のネット購入、広がる

 化粧品業界は百貨店や化粧品店での美容部員による対面販売が主流だった。定価販売への拘束を認める再版制度が1997年に撤廃されて以降、カウンセリングのないドラッグストアでのセルフ販売も増えた。それでも化粧品は店頭で試した後に買う人が多く、ECの利用率は6%弱にとどまる。一方、中国の化粧品のEC購入比率は7割を超える。コロナ禍をきっかけに、日本事業でもECの拡充に踏み出す。今後はオンライン化の流れは避けられない。

「マスクをしていたら化粧はいらない」などという声も広まり、常にマスクをする行動様式が広まれば化粧品需要が大きく減退するという指摘もある。化粧品各社はインバウンドに依存しない成長戦略を描けるかが問われている。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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