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ストロング系缶チューハイは“酒ではなく薬物”なのか?精神科医が依存&健康リスクに警鐘

文=谷口京子
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「gettyimages」より

 近年、コンビニやスーパーの酒類売り場で幅を利かせている、アルコール度数7~9%の「ストロング系チューハイ(以下、ストロング系)」。価格が安く、アルコール度数も高いので“手軽に酔える”と人気を集めており、年々市場が拡大している一方、ストロング系を飲み続けることで、さまざまな健康リスクがあるとも言われている。

「会話もできないくらい酔ってフラフラに…」

 原田優さん(仮名・44歳)は、友人の男性がストロング系を愛飲するようになってから“酔い方が変わった”と感じる、と話す。

「この数年、彼がストロング系をよく飲んでいるのは知っていました。この前、久々に居酒屋で一緒にを飲む機会があり、彼はその日も『ストロング系を1本飲んでから来た』と言っていました。その後、普通のビールで乾杯したのですが、1杯目を飲み終わる頃には会話もできないくらい酔っ払ってしまい、足元もフラフラ。すぐにタクシーで帰らせました」

 翌日連絡をすると、飲み会の記憶もほとんどなかったという。原田さんは「酒に弱いイメージがなかったので驚いた」と振り返る。

 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部で部長を務める精神科医の松本俊彦氏は、自身のフェイスブックでストロング系について「『危険ドラッグ』として規制した方がよいのではないか。半ば本気でそう思うことがよくあります」と投稿、依存症リスクの観点から警鐘を鳴らした。

「実は前々から、アルコール依存症患者のご家族から、ストロング系を飲んだときの酔い方がおかしいという声があり、自分の臨床経験でも患者さんの酔い方に違和感がありました。500ml缶を3本飲んで前後不覚の泥酔状態になったり、だらしない酔い方になったりするという印象です」(松本氏)

 そのほか、メンタルヘルスに問題を抱えている人がつらい気持ちを紛らわせるためにストロング系を飲んで自暴自棄になってしまうケースなど、松本氏のもとには多くの患者が相談に来るという。この投稿の反響は大きく、ネット上で議論を呼んだ。

「臨床現場ではよくある症例だったので、これほど注目されるとは思いませんでしたね。ただ、広く拡散された背景には、多くの人が心のどこかで『ストロング系はほかの酒とは違う』と感じている、ということなのかもしれません」(同)

ストロング系缶チューハイが抱える3つの問題点

 松本氏は「ストロング系には、大きく分けて3つの問題点がある」と指摘する。

「まずひとつは、飲みやすさです。アルコール飲料というよりも清涼飲料水の味に近いので、お酒の味が苦手な女性や、お酒になじんでいない若者も飲みやすく、ジュースや水のように急ピッチで飲めるのが特徴です。しかし、いくら飲みやすくても、ビールの倍近くのアルコール度数があるお酒を短時間で飲む行為は、さまざまなリスクを伴います」(同)

 確かに「お酒は飲めないが、ストロング系ならグイグイ飲める」という女性も少なくない。さまざまなフレーバーがあり、サイダーのような飲み口は“お酒を飲んでいる”という意識を薄れさせてしまうようだ。

「ビールと同等か、それ以上のアルコール度数があるものを急ピッチで飲み続ければ、血中のアルコール濃度も急激に上昇します。その結果、体がおに慣れる前に、精神面に影響を与えたり、足腰が立たなくなるなど運動機能が低下したりと、さまざまな影響が出てしまうようです。ビールや焼酎、日本酒などはお腹にたまる感覚があるので、短時間で多くの量を飲むのは難しいはず。この点は、ストロング系とそれ以外のお酒との大きな違いですね」(同)

 2つ目の問題点は、価格の安さだ。スーパーやドラッグストアなら100円以下で350ml缶のストロング系を買うことができる。値段的に気軽に手が出せる状況も極めて危険だという。

「大学生などの若い人やお小遣いが限られているサラリーマンにとって、価格の安さは魅力ですよね。お酒にこだわりがない人なども、安く酔えるコスパの良さは手に取るきっかけになると思います。とはいえ、水やジュースよりも安いお酒には、いったい何が入っているのか……そう考えると、常飲するのは考えものですよね」(同)

 そして、問題点の3つ目は「“薬物”としてストロング系を飲む行為」にあるという。

「もちろん、ストロング系を楽しく飲んでいる人もいると思います。しかし、生活や精神面に問題を抱えている人のなかには、“酔うために飲む”というケースも少なくないです。彼らはお酒が嫌いでも『つらい気持ちを紛らわしたい』『何も感じなくなってしまいたい』というときに、ストロング系をすごい勢いで飲んでしまいます。酔うために飲むお酒は『薬物』と同じなので、依存のリスクを高めます」(同)

 松本氏は「酔うこと自体が目的になるのは非常に危険」と話す。従来の“お酒そのものを楽しむ”酒の文化と、“酔うために飲む”ストロング系の文化は、まったく別物なのかもしれない。

ストロング系を生んだ日本の酒税法の仕組み

「ストロング系は、すでにアルコール依存症になっている人々にも人気です。お酒が苦手な人とアルコール依存症の人という、これまで両極にいた人たちが同じストロング系を飲んでいる状況なのです」(同)

 アルコール依存症とのかかわりも示唆されるストロング系と、適度に付き合う方法はあるのだろうか。松本氏は「350mlを1本でとどめるのが理想」と話す。

「厚生労働省では、健康リスクが低い適正飲酒量を『1日あたり平均で日本酒1合(純アルコール20g)』と定めています。度数9%のストロング系の350ml缶に含まれる純アルコール量は25.2gなので、1本飲んだ時点で適正量を超えますが、1本でやめればリスクはそれほど高くありません。ちなみに、500ml缶の純アルコールは36gなので、やはり1本で適正飲酒量の倍近くになってしまいます。ただ、ストロング系が好きな人の多くが500ml缶で飲んでいるのが悩ましいところです」(同)

 さらに、健康リスクが高まる飲酒量は「1日あたり平均で純アルコール60g以上」と定められているので、ストロング系350ml缶2本でギリギリ、500ml缶を2本飲むと確実にアウトなので、自制する必要があるだろう。

 松本氏は、リスクを発信しつつも「ストロング系が生まれた背景には、メーカー側の苦労もうかがえる」と話す。特に大きく影響しているのは、日本の“税収ありき”の課税方法だという。

「日本では、アルコール度数に関係なく、ビールや発泡酒など、飲まれる頻度が高いアルコール飲料に課税していく仕組みを採用しています。そのため、メーカー側は課税対策として、税率が低いストロング系のようなものを生み出したと考えられます。北欧のようにアルコール度数の高さで課税率が上がる仕組みであれば、ストロング系は誕生しなかったのではないでしょうか」(同)

 誰しも「嫌なことを忘れて飲み明かしたい」、そんな夜もあるだろう。しかし、自分とストロング系との関係が適切なものかどうか、一度考え直してみてほしい。

(文=谷口京子)

松本俊彦

松本俊彦

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。1993年佐賀医科大学医学部卒業後、国立横浜病院精神科、横浜市立大学医学部附属病院精神科などを経て、現在に至る。『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版)など、著書多数。
●「国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所

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