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「他人が触ったハンドルが…」カーシェアと駐車場の利用者急減、タイムズが赤字転落

文=編集部
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タイムズカーシェアの駐車場(「Wikipedia」より/松岡明芳)

 新型コロナウイルスの影響で、車のシェアリングサービスの利用が急減している。感染の恐れから消費者が他人と物を共有することを避けるようになったからだ。短距離でも簡単に借りられるカーシェアリングサービスは人気が出ていたが、コロナの一撃で急成長にブレーキがかかった。

 国内最大手の「タイムズカーシェア」を展開するパーク24は2020年10月期通期連結業績予想を下方修正した。最終損益は255億円の赤字(19年10月期は123億円の黒字)。1999年に東証2部に上場して以来、初めて赤字に転落する。当初予想は165億円の黒字予想だった。

 外出自粛や企業の営業活動の縮小で時間貸し駐車場「タイムズパーキング」やカーシェア・レンタカーの利用も大幅に減少した。売上高は前期比17.1%減の2630億円と約700億円の下振れを見込む。営業損益は242億円の赤字(前期は223億円の黒字)と、267億円の黒字予想から一転して赤字の見通しとなった。年70円の配当予想も無配とした。

 赤字決算、無配転落の発表を受けて、翌6月16日、パーク24の株価は一時、前日比293円(14.8%)安の1691円まで下落する場面があった。終値は8.1%安の1823円と3月26日以来の安値となった。

急成長してきたカーシェアの利用者が急減

 20年10月月期上半期(19年11月~20年4月)の連結決算の売上高は前年同期比5.5%減の1456億円、営業損益は12億円の赤字(前年同期は99億円の黒字)、最終損益は25億円の赤字(同56億円の黒字)となった。上期の最終赤字も上場以来初めてのことだ。

 全国展開する時間貸し駐車場のスペースを活用してカーシェア事業に取り組んできた。スマホで予約して15分220円から車が借りられ、ガソリン代や保険料も必要がない利便性から急速に普及。利用できる駐車場の数は1万3000を超え、法人を含めた会員数は130万人と過去5年間で約2.5倍に急増した。

 だが、新型コロナウイルスの感染拡大で情況が一変する。20年2月~4月の3カ月間のタイムズカーシェア事業の売上高は前年同期比6.5%減の77.8億円、営業利益は52.8%減の7.3億円に落ち込んだ。

 電話による記者会見で、西川光一社長は緊急事態宣言が全都道府県に適用され、外出自粛が広がった5月のカーシェアとレンタカーを含むモビリティ事業の売上高は前年同月比45%減となったと明かし、「移動ということに制限がかかっているなかで非常に厳しい状況が続く」と話した。

 国内の駐車場事業の売上高は今年2月まで前年同期を上回っていたが、3月以降マイナスに転じた。5月は前年同月比66.5%の水準だという。西川社長は、国内事業について「月次ベースで黒字化が見えてくるのは早くて20年末」との見通しを示した。

 英国やシンガポールなどで事業展開する海外の駐車場事業もロックダウン(都市封鎖)の影響から利用者が急減している。連結売上高は6月以降回復するものの、10月で計画比85%程度(15%減)にとどまるとみている。5~10月にグループの役員報酬を自主返上。西川社長は基本報酬の75%を、他の役員など24人は20~30%を自主返上する。西川社長は「コスト管理を徹底して21年10月期から黒字に転換したい」と述べた。

他人が握ったハンドルには触りたくない

 使われていないモノや場所、技能などをインターネットで仲介し、貸し借りや売買するのがシェアリングエコノミー。海外で先行して普及し、日本にも浸透してきた。代表例は一般住宅に旅行者を有料で泊める民泊や自家用車で乗客を運ぶライドシェアだ。自家用車に有償で客を乗せるライドシェアは日本では「白タク」として禁止されている。若者を中心に自動車の所有欲が下がり、短距離でも気軽に借りられるカーシェアリングサービスの人気が出てきた。

 パーク24はカーシェアの大手だ。車両保有台数は2万7800台と国内最大規模を誇る。Web制作会社のジェイティップス(東京・渋谷区)の主要6社調査によると、「タイムズカーシェア」の市場占有率は77%と圧倒的だ。三井不動産リアルティの「カレコ」の約4200台(約12%)やオリックスグループの「オリックスカーシェア」の約3500台(10%弱)を大きく引き離す。

 パーク24は駐車場経営の最大手だが、今やカーシェアというニュービジネスの旗手に躍り出た。しかし、コロナ禍でカーシェアは苦戦を強いられている。外出自粛によって移動需要そのものが落ち込んでいることが利用減の最大の原因だがそれだけではない。最短10~15分単位で利用者が入れ替わるカーシェアの特性が影響している。コロナの感染を恐れて、電車のつり革につかまらないように、他人が触ったハンドルを握ることを避けているのだ。

 カーシェア車両は定期清掃時に利用者が手を触れる部分を中心に消毒するほか、車内に除菌スプレーを常備するなど対策を講じている。他人が握ったハンドルに触りたくないという傾向が定着すると、カーシェアが人気を取り戻すことは厳しくなる。新型コロナの感染防止意識から「これまでのようなシェアリングの普及は難しい。利用から所有の流れに戻る可能性がある」との見方が出ている。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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