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『ゴースト・オブ・ツシマ』が異常なクオリティの高さ…黒沢映画へのオマージュ炸裂

文=後藤将之/ライター
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斬った敵の倒れる「間」はまさに日本の古き良き時代劇の物

 対馬に攻め寄せた蒙古軍を前に、たった一人生き残った武士・境井 仁(さかい じん)。冥府から蘇った者「冥人(くろうど)」として、侍の道に反した戦い方に手を染め、対馬の民を守るために立ち上がる――。

 西洋ファンタジーや、現代・近未来を舞台としたものが主流のオープンワールドタイプながら、「中世の日本」を全面に押し出した本作。しかも制作したのは米国のメーカー・Sucker Punch Productions LLC.(サッカーパンチプロダクションズ)、『怪盗スライ・クーパー』『inFAMOUS』など、日本ではいまいちパッとしなかったタイトルを手掛けてきた会社だ。

 しかしそんな不安を吹き飛ばすほどに、われわれ日本人が見てもPlayStation 4用ゲームソフト『Ghost of Tsushimaゴースト・オブ・ツシマ)』は素晴らしい。いや、日本人だからこそ楽しめる作品に仕上がっているのだ。

『SEKIRO』となるか『侍道』となるか?発売前の期待は微妙

『Ghost of Tsushima』発売前の情報から多くゲーマーが思い浮かべたのは、昨年3月に発売された『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(フロム・ソフトウェア)』と、今年3月の『仁王2(コーエーテクモゲームス)』の2本だろう。この日本のゲームメーカーによる和風アクションアドベンチャーは、国内だけでなく海外でも高い評価を得た作品ながら、もはやこうもたて続けに出ると食傷気味。

 また「和風+オープンワールド」という手法も、実はPS2~PS3時代にすでに試みられたジャンルであるのも事実。この方面に挑戦した『侍/侍道シリーズ(スパイク)』は自由度やテレビ時代劇のようなシナリオは高評価を得たものの、破天荒な展開で一部からは「バカゲー」として記憶されているタイトルだ。

 当然、米国メーカー制作の『Ghost of Tsushima』も、ハリウッド映画にありがちな「おかしな日本観」満載の、ありふれたゲームになるのでは? と考える人が多くても不思議ではない。

本当に“ガイジン”がつくったのかと思うほど…「時代劇」「チャンバラ」への造詣の深さ

『Ghost of Tsushima』は1274年の「文永の役」を背景に、対馬に攻め寄せた蒙古軍に対し、わずか80騎の武士団が戦った史実をベースにしているという。ただ歴史に忠実というワケではなく、主人公はもちろん敵将となるコトゥン・ハーン。ハーンも架空の人物。広い草原があるなど、実際の対馬とは植生や地形も異なる。時代考証にも、13世紀の鎌倉時代(劇中に「文永」の元号が出てくる)であるにもかかわらず、刀や甲冑が16世紀の戦国時代様式であるなど粗も見られる。

 しかし、その描写はわれわれ日本人の目から見ても「骨太」だ。主人公のアクションは、まさに「刀」を使った「殺陣」。ブンブン振り回して、敵を薙ぎ払うような使い方はしない。斬られた敵にしても、時代劇で見られた「タメ」や「崩れるような倒れ方」といった演出が満載。こうした演技について、「斬られ役専門役者」こと福本清三さんのご意見を聞いてみたいと、つい考えてしまった。

 制作スタッフもかなり日本の時代劇、特に黒澤作品を研究したようで、カメラワークや演出にその影響が見られるばかりでなく、画面をモノクロ基調にする「Kurosawa Mode」まで用意されているオマージュぶり。その再現性は思いのほか高く、音楽を除く制作者全員が“ガイジン”であると信じられなくなってくるほどだ(サウンドは映画音楽の作曲でも有名な梅林茂が担当。彼はテレビドラマ「柳生十兵衛七番勝負」なども手掛けている)。

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かの黒沢映画を彷彿とさせる渋いモノクロ画面モード

 テレビや映画から「チャンバラ」が消えて久しい現在。逆に国内のゲームメーカー・クリエーターに、ここまで「時代劇」にこだわったタイトルがつくれるのだろうか? 『Ghost of Tsushima』は、そんな日本から失われてしまったものを、久しぶりに感じさせてくれる作品なのだ。

(文=後藤将之/ライター)

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