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あつ森、中国本土に加え香港でも流通禁止措置か…日本のゲーム業界に死活問題なワケ

文=編集部
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任天堂『あつまれどうぶつの森』公式ホームページより

 とあるゲームファンの香港人が28日、Twitter上に「これは救難信号です。もう一生バズらなくてもいいからこれだけはバズらせてください」(原文ママ)と投稿した。投稿は中国全国人民代表大会(全人代)が28日、国家安全法の香港への導入を採択したことを受けたものだった。だが、同法の香港導入に関する日本国内の報道は低調で多くの国民が“いまいちピンとこない”というのが現状だろう。だが、投稿ではNintendo Switch用シミュレーションゲーム『あつまれ どうぶつの森』(任天堂、通称:あつ森)が中国本土で規制された事例などを列挙。この問題がはらむ危険性をわかりやすく訴え、日本国内で賛同の輪を広げている。

 時事通信は28日、記事『香港に国家安全法導入 「一国二制度」有名無実化―中国全人代』で、「国家安全法の施行により香港で言論統制が一段と強まり、高度な自治を保障する『一国二制度』の有名無実化が進むことは確実だ。李克強首相は(全人代)閉幕後の記者会見で、同法導入は『一国二制度を安定させ、香港の長期的繁栄を守るものだ』と強調した」と報道。また米英豪カナダの4カ国が共同声明を発表し、香港の自治と自由を侵害する行為と批判したことにも触れている。

「これは救難信号です」

 こうした中、文頭で紹介した投稿者は次のようにTwitter上で発信した。

【埋め込み】

「このTwitterアカウントのプロフィールに書いてある通り、私はただのゲーム好きの香港人です。私は今足らない日本語語量を総動員して、自分の視点からこの『救難信号』を書いています。すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、今日5/28の午後、中国で香港に『国家安全法』なるものの導入が決定されました。

 これは香港人が約1年間抗い続けてきた、香港及び中国政府の人権、自由侵害の集大成とも言えます。 この『さきかけ』を倒せない限り、中国政府の香港への侵食はただ深刻する一方になります」

「あつ森」は反政府メッセージ発信に使われる?

 投稿者は東洋経済オンラインの記事を引用した上で、表現の自由や自治のはく奪につながる危険性について次のように指摘した。

「『そんなに大げさか?』 との声もありました。ここで少しニュースを引用して例を上げましょう。自分のゲーム趣味に関連する、先月のニュース記事です。みんな大好き『集まれ!どうぶつの森』が中国での流通を禁制されました。

 禁制の理由は政府機関から明言されておらず、禁制に関する正式な発表もありません。ただある日を境に、中国のSNS、 ECから検索できなくなりました。

 禁制の理由について、 正解は公表されませんが、確信に近い考察として、『その極めて高い自由度から反政府のメッセージの発信に使われる可能性がある』のがあります。 実際、香港の民主化運動家の一人がその運動をテーマにしたデザインを発表しました。禁制のタイミングもその発表の後であり、筋書きが通っています。

(中略)

 さて、これが今回の国家安全法にどんな関連性があるかと言いますと、 『これが香港にも及ぼす可能性ができた』のです。 この国家安全法には『中国政府は今後国家の分裂や危害を防ぐためなら、新しい法律を制定し、基本法の付録3に差し込み、実施する権利がある』とあります。 ということは、そう言った口実さえあれば、今後中国政府は無限に『付録3』を厚くすることができます。これは香港従来の自治方式を明らかに違反しています」

 投稿者は香港人がすでに疲労困憊状態にあること、自分自身がデモに行けるほど強くないことなどを赤裸々に訴え、自身の投稿の拡散を要望。最後に「どうか、香港を、お願いします」と結んだ。Twitter上では以下のように賛同の声が続々と上がっている。

「香港の方々は新型コロナでも日本によくしてくれていますし、本当なら許せない事ですね。僕に力がなく、RTすることしか出来ませんが、協力させて頂きます。明るい未来がある事を願います」

「完璧な日本語素晴らしいです。日本とて他人事では無い、まさに悪い意味での対岸の火事ですね。燃えるまでは熱さ分からず、燃えてからでは遅すぎる・・・・・・。残念ながら私はRT程度の事しか出来ませんが、応援してます!香港加油!」

多くの中国人ゲームクリエイターが表現の自由を求めて香港へ

 今回の国家安全法の香港導入は日本のゲーム業界にどのような影響を与えるのか。ゲームサイト編集者は次のように解説する。

「中国製作のゲームというと、日本では女性キャラクターの露出や戦闘・シナリオの過激さが話題に上ります。そういう傾向の作品が多くなってしまう背景には、多くの中国人ゲームクリエイターたちが、中国本土では国家安全法などの適用で自由な表現ができなくなってしまっていることがあると思います。

 これまで香港は同法の適用外でした。だから、本土の多くのゲームクリエイターが自国ではできない表現をするために香港にわたり、仕事をしてきました。たとえ、中国本土で配信や販売ができず、日本などでしか流通しなかったとしても、自分がつくりたいものを作っていたのです。

 日本のゲーム制作会社も、人件費削減などの観点から多くの作業を香港などの企業に外注しています。中国人たちも自由な表現や、作りたい作品に触れられるということで喜んで各プロジェクト参加してくれていたと聞きます。つまり日本と香港は、相互に協力し合って、クールジャパンの代表でもあるゲームコンテンツを作ってきたのです。

 中国でのゲーム規制は、これまでも線引きが非常にあやふやで、政府の恣意的な運用がなされていました。状況によっては日本のゲーム業界にも影響が出る可能性もあります」

 表現の自由に関して考えさせられる事例が日本国内でも頻発している。こうした問題に日本はどう向き合うべきなのかが、問われている。

(文=編集部)

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